ハヤブサは戦士と太陽の神々の化身であり、中でも重要な神がホルスだった。この壮麗な胸当ては、紀元前1325年ごろに10代で亡くなったツタンカーメン王の墓から出土したもの。カイロ、エジプト考古学博物館(ARALDO DE LUCA)

新王国時代(紀元前1539年~1075年)には、ファラオによる統治の座はメンフィスからテーベへと移された。この移動は神学的に大きな影響を及ぼし、カルナック神殿などテーベにある神殿で崇拝されていたアメン神が国神へと格上げされた。アメン神は、ラー神と一体化したアメン・ラーの姿で雄羊として描かれることが多い。

アメン神と雄羊とのつながりは、はるか昔のエジプトの神で、人間を作り出したとされるクヌムにまでたどることができる。アメンは「2本の角を持つ神」と呼ばれることも多い。雄羊は豊穣(ほうじょう)や戦争を象徴し、新王国時代のファラオを守る強力な守護神となった。

角を持つ女神たち

初期の女神たちはその多くが、出産、豊穣、栄養など、生命や生殖に関連するものをつかさどっていた。最も古い女神の中には、牛の頭部や角が付いている者もあった。

たとえばバト神は、エジプトの国家統一をたたえる内容が記された紀元前3100年ごろの重要遺物「ナルメルのパレット」に、牛の角をつけた姿で描かれている。時がたつにつれ、バト神はまた別の強力な女神ハトホルへと進化していったようだ。ハトホルは、母性、音楽、農業、喜び、さらには死など、生命に関わる数多くの領域に影響を与えた。

「黄金の者」として知られ、何世紀にもわたって輝きを放ち続けたハトホルだが、その役割はやがて、重要性を増したイシス神へと組み込まれていった。イシス神は通常、人間の姿で描かれ、動物とのつながりはさりげない形で示される。イシスの頭の上には牛の角が描かれていることが多く、これはハトホルへの賛意を表している。イシスはその後、ハトホルの役割を引き継ぎ、とくに冥界の支配者オシリスの配偶者・守護者として、エジプトの母・妻の普遍的なシンボルとなっていった。

ワニとハヤブサが混ざり合った姿のホルスは、ナイル川デルタでよく見られた。紀元前7世紀。カイロ、エジプト考古学博物館(ARALDO DE LUCA)

イヌとネコの神々

ペットとして世界で最も人気のあるイヌとネコもまた、エジプトの神話において大事な役割を担っていた。冥界でオシリス神に仕えた重要な神が、ジャッカルの頭部を持つミイラづくりの神アヌビスだ。力強いジャッカルが死者のために行動するというのは、埋葬されたばかりの死体を掘り起こす習性のある自然界のジャッカルに対する防御としては最適だっただろうと、歴史家は考えている。

ネコの女神たちは今日、多くの博物館で人気を集めている。ネコの神々へ信仰は、当初は特定の都市と結びついたものだったが、その名声が広まるにつれて、地域にいるよく似た神々と結びついていった。たとえばメンフィスで重要だったのは、ライオンの頭を持つ戦の女神セクメトだった。

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奉納品だった動物のミイラ