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新垣結衣の癒やし効果的中 アサヒ生ビールCMの舞台裏

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アサヒビールが「スーパードライに次ぐ第2の柱」として2021年9月に復刻させた「アサヒ生ビール」(通称マルエフ)。売れ過ぎて一時休売となったが、11月24日に販売を再開。早々に人気を取り戻した。初めて発売された昭和から令和へと時代が移りながらも、ユーザーを捉え続ける魅力には、新垣結衣を起用したテレビCMが大きく関係していた。

採用理由は「新垣結衣の癒やしの雰囲気」

「マルエフ」の愛称で親しまれ、28年ぶりに缶商品として復活したアサヒ生ビール。復活発売の直後から想定を上回る注文で商品供給が追い付かず、発売から3日後の17日には一時休売となるほどの人気ぶりを見せた。

マルエフが初めて発売されたのは1986年、そこから缶と瓶の販売が終了した93年以降も、樽(たる)生で飲食店を中心に愛飲され続けた。35年の歴史を持つマルエフだが、21年9月の復活に当たって、商品の味を変えることはしなかったそうだ。

アサヒビール マーケティング本部 宣伝部担当課長の大場洋右氏は、令和の消費者にマルエフが受け入れられた理由を「現代に合わせて、新しい価値観やイメージを付与したから」と話す。

「以前に比べて現代では、不要不急の事柄をそぎ落とすような空気感が生まれ、世の中全体の流れが速くなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、閉塞感が生まれ、すさむ感情を発散できる場も少なくなった。そこで多くのユーザーに、癒やしやぬくもりを届けられるよう、マルエフを飲むとどこかホッとする優しいイメージを持たせた」(大場氏)

大場氏が語るように、アサヒビールはマルエフの商品コンセプトを「癒やし・ぬくもり・まろやかさ」に設定して売り出した。しかし、同社にはマルエフのように「温かみがある」コンセプトのビールは珍しい。そもそもビールに「ぬくもり」というコンセプト自体が斬新だ。同社の主力商品「スーパードライ」を考えればよく分かるだろう。ビールといえば、やはりキレや爽快感が消費者の心に刺さるのだ。

そんな既成概念にあらがうかのごとく、マルエフではこれまでの商品群にはない、柔らかなイメージをくみ取ってもらう必要があった。この難題に答えを出せるCMキャラクターとはいったい……。アサヒビールが白羽の矢を立てたのは、新垣結衣だった。

「タレントや俳優・女優など、様々な方を検討していく中で、癒やしのオーラを持つ新垣さんを真っ先に候補に挙げた。撮影現場でも、最初はスタッフをはじめ初対面同士で緊張感があったが、新垣さんの人柄もあって緊張した空気が和らぎ、現場全体は終始笑みがあふれていた」(大場氏)

21年5月に新垣が結婚した事実は「CMの起用に関係ない」と言い切る大場氏。新垣が醸し出す雰囲気そのものがマルエフのブランドコンセプトに合致していたため、今回のキャスティングにつながった。

実際、21年9月に第1弾として放映された30秒版CM(21年12月11日以降は、年末バージョンとして第2弾のCMが放映中)を見ると、新垣のセリフと温かみのある背景の雰囲気から、商品イメージが膨らんでくる。

商品コンセプトや背景を満遍なく訴求

CMは3部構成になっている。

第1部は、仕事帰りを思わせる新垣が、歩く人々と足早にすれ違いながら街並みの中を歩くシーンだ。この場面ではせわしない世相を表しており、「何かと忙しい時代、心のゆとりを忘れてしまいそうで」と新垣が口にする。

街中でのシーンが終わり、居酒屋ののれんが映し出される光景からが第2部だ。にぎわう客であふれる店内が映し出され、カウンターに座った新垣が満面の笑顔で、グラスに注がれた生ビールを店員から受け取る。人と人のつながりや、温かさを連想させる描写だ。ここで「ずっと前からお店で愛され続けてきた、このまろやかなアサヒ生ビールで」というセリフで、マルエフの商品コンセプトや飲食店で提供されてきたストーリーを伝える。

その後、新垣が飲んでいるグラスにカメラが寄っていき、場所が居酒屋から自宅のベランダへ転換する。ここからが第3部だ。飲食店だけでなく、仕事終わりの自宅でもリラックスして、オフの時間を満喫できる良さを強調する。新垣は缶のマルエフをグラスに注いだ後、カメラ目線で「日本のみなさん、おつかれ生です」と、ねぎらいの言葉をかける。第2部で演出した商品コンセプトに、だめ押しとも言える新垣の癒やしの魅力を掛け合わせ、CMが終わる。

大場氏によれば、あるCM調査会社からは「新垣結衣や竹内まりやの楽曲に癒やされる」「マルエフはまろやかでおいしい」といったユーザーからの反響があると伝えられ、想定通りの宣伝効果が得られているそうだ。

「9月の販売休止から再発売まで2カ月以上空いたので、(マルエフに対する)消費者の印象が薄れてしまう恐れも大いにあったが、販売再開を待ち望む声が多かった。CMの内容に加えて、消費者に商品価値が伝わったからこそ、販売再開時の勢いにつながった」と大場氏。

ただ、ブランドイメージをここまで忠実にCM内で実現できたのは、新垣の起用や時代の空気感をくみ取っただけではない。大場氏は制作段階での苦労をこう打ち明ける。

「CMの雰囲気だけを重視すると、情感は伝わっても商品自体のおいしさが消費者に届かないことが多々ある。今回なら、ぬくもりやリラックス感を出しすぎると、ビールなのに『温かい商品のようだ』と違和感を持たれたりとか。ブランドの目的、商品の特性や歴史、新垣さんのセリフをはじめ、CMの世界観を醸成する要素がどれも欠けないよう注意した」(大場氏)

「1つボタンをかけ違えると、伝えたいことが正確に伝わらない。まさに糸を紡ぐような作業だった」と、大場氏は制作過程を振り返る。「爽快感やキレの良さ」といった従来のビールとは異なるマルエフらしさを醸成しつつ、商品の魅力を届けるために、実はCMの製作陣がこだわった点がある。

セリフやカットは少なめ、注ぎ方はゆっくり

CMの演出でこだわった部分は大きく3点ある。まずはセリフやカット数を詰め込まず、ゆとりを持たせた点だ。

「CM内のセリフでも『心のゆとりを忘れてしまいそうで』とあるので、せわしない空気を出さないよう意識した。ブランドが癒やしやぬくもりを重視しているのに、制作側が多くを語りすぎると印象が損なわれてしまう」(大場氏)

2つ目は、竹内まりやの楽曲「元気を出して」を使用した点だ。この曲は竹内まりやが作詞・作曲し、1984年に薬師丸ひろ子へ提供された。その後88年にセルフカバーされた、優しい歌詞と曲調が耳に残る名曲だ。今から30年以上前の楽曲ながら、現在の若い世代にも人気がある点を加味して選曲したそうだ。

「(竹内まりやさんの楽曲は)今では海外も含めて、若い世代もYouTubeで再生し、人気が再燃している。『レトロなコンテンツの魅力』と『現代の消費者のインサイト』、どちらかを強調するのではなく共存させることで、マルエフも時代を超えて受け入れてもらえたらと考えた」(大場氏)

3点目は、ビールの飲み方や注ぎ方をゆったりと丁寧に表現したところだ。

「従来のビールのCMは、ゴクゴクと量を飲んで、『くう~』とうなるようなシーンが一般的だった。マルエフでは、それとは一線を画す『ほっ』とするイメージを持たせたかったので、新垣さんには飲み方などを意識してもらった」(大場氏)

セリフの量やビールの飲み方などは、ぱっと見ただけでは気付きにくいポイントだ。だからこそ消費者に、CM全体の雰囲気から自然に感じとってもらえるよう配慮した。こうした細部へのこだわりが、商品の魅力とコンセプトのバランスを崩さない表現につながっている。

「CM内の『日本のみなさん、おつかれ生です』という大きな"主語"も、新垣さんだからこそ嫌みに聞こえなかった。こちらがイメージを伝える際も、新垣さんは熱心に耳を傾けてくれ、個々の細部のシーンを確認しながら撮影できた」と、制作中のエピソードを語り、世代や年齢を超えて受け入れてもらいやすいCMに仕上がったと大場氏。

アサヒビールでは、21年12月11日から年末バージョンとして第2弾のCMを放映中だ。第1弾を踏襲する形で、屋上のシーンと飲食店の描写を織り交ぜている。22年1月からは年始バージョンも放映予定で、時節に合わせながら、より近い距離感で消費者の心に寄り添っていく。

せわしない師走のイメージや、親族などと触れ合う機会も増える年末年始。アサヒビールはこれまでにない、ビール商品の「ぬくもりや温かさ」をCMを通して消費者に訴求し、一層の認知拡大と飲用喚起を促していく。

(ライター 佐藤隼秀、写真提供 アサヒビール)

[日経クロストレンド 2021年12月22日の記事を再構成]

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