雨にぬれると透明になる「サンカヨウ」

公開中の主演映画は、窪美澄さんの小説を映画化した『かそけきサンカヨウ』。映画『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018年)、『mellow』(20年)で志田さんを起用してきた今泉力哉監督の作品だ。志田さんは、父親の再婚で新しい家族を迎えたり、淡い恋をしたりしながら成長していく高校生・国木田陽を演じる。

「最初に今泉監督とご一緒した『パンとバスと2度目のハツコイ』の打ち上げの席で、『いつか志田さん主演で映画を撮りたい。そのときはよろしくお願いします』と仰っていただきました。それから、今泉作品に主演することを1つの目標にしてきたので、こんなにも早く実現していただけて、ありがたい気持ちでいっぱいでした。また、この作品は、所属事務所『テンカラット』の25周年記念作品でもあります。その主演に選んでいただいたということもありがたく、うれしかったです。

演じた陽は、一見大人びて見えるけど、実は弱い部分もある女の子。その繊細さをどうやったら伝えられるだろうと考えて、今までと違うやり方に挑戦しました。普段は台本に書かれていない部分まで深掘りして役作りをしますが、今回はあえてセリフを頭に入れるだけで現場に入りました。そして、その場で感じたものを素直に相手に伝えるようにお芝居をしたら、これまでと違う表情や演技ができました」

陽が恋心を抱く陸を演じるのは、鈴鹿央士さん(左)。本作の後、ドラマ『ドラゴン桜』で再共演した。「『かそけきサンカヨウ』のときは、お互い人見知りして、あまり話せなかったんです。でも、だからこそ、陸君と陽の微妙な関係性が出せたのかなと思います」  (c)2020 映画『かそけきサンカヨウ』製作委員会

劇中で印象的なのは、タイトルにもなっているサンカヨウ(山荷葉)。山奥の湿った場所に生える多年草で、その花びらは、雨にぬれると透明になるという。

「すごく不思議なお花だなと思いました。なぜ透明になるんだろうって、今でも不思議です。小説に『こんなふうに、私も透明になりたい』という陽の言葉がありますが、陽も外からのいろんな刺激を受けて、どんどん心が透き通っていく。その様子が、まさにサンカヨウみたいだなと思いました。

完成した映画を見て感じたのは、思いを言葉にして、直接伝えることの大切さ。SNS(交流サイト)の普及や新型コロナウイルス禍で機会が減っていると思いますが、そういった大事なことを思い出したり、大切な人を思い出したりしてもらえたらうれしいです」

脚本は今泉監督と澤井香織さん(『愛がなんだ』『Arc アーク』)が共同で執筆。「窪さんの小説を読むと、本当に温かい作品で、涙が止まらなくなって。映画には、そんな窪さんの世界に今泉さんと澤井さんの色や温度感が加わって、より魅力がアップしていました。こんなすてきな作品に主演できるんだと思うと、幸せな気持ちになりました」
「目標は、いろんな役を演じられる女優さんになること。『この人といえば、こういう役だよね』ではなく、『この人なら、こういう役もできそう』と思ってもらえる存在になりたい。そのために今は1つ1つの現場を大事に、丁寧に演じて、自分の引き出しを増やそうとがんばっています」
次のページ
買ってよかったのは掃除機、憧れはライカ