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事務所の枠を越えた「ユナイト」をしたい

オーディションやボーイズグループは世間の話題に上りやすい。その状況はBMSGの認知度こそ上げられるかもしれないが、BMSGの持つビジョンや音楽性とはかけ離れた方向に進んでしまう危惧もあった。しかし、こうしてリリースを連発することによって、BMSGは自身の進むべき道を、進みたかった方向に、非常に鮮やかなステップで歩み始めたように見えた。

「世間に『BE:FIRSTの事務所』と捉えられることは、会社としての自由度も薄まってしまい、一長一短の『短』が多くなりかねません。ほかならぬBE:FIRSTにとっても。BMSGの最初のアーティストはNovel Coreで、その次にボーイズグループであるBE:FIRSTがデビュー。その後、Aile The Shotaやedhiii boiを世に出せたのは、打ち出しとして完璧でしたし、そのバランスは本当に意識した部分です。

今の時代、目から入る情報を無視することはクリエイティブではなく、それゆえに意識的に顔を出さないアーティストも生まれている状況です。そのなかで、僕らBMSGのソロアーティストって、Novel CoreにしてもAile The Shotaにしても、ビジュアル的にも非常にアイコニック。同時にBE:FIRSTには、アイドル性も保ちながら高い音楽性も併せ持つボーイズグループになることを求めています。ソロだからここだけが売り、グループだからここだけが売りというのではない。そんな彼ら全員が1つのクルーとして絡み合っていったら、すごく面白いことが起きるはずです。

僕、マーベル作品が大好きなんですが、同じマーベルなのに、作品によってコメディだったりヒューマンドラマだったりサスペンスだったりドキュメンタリーだったりする。めちゃくちゃ面白くないですか? それでいて数年に1回、全キャラクターが勢ぞろいする作品があって……あのエクスタシーって半端じゃないです。

そんな形態をマネできるのかと思うでしょうが、作れます。嘘をつかないことを大前提にすれば、実際の人間のほうがよっぽどドラマがあると僕は思っているんです。だから、BMSGに所属するみんなには、自分に嘘をつかず、思うがままに進んでほしい。さらにBMSGだけでなく、事務所の垣根を越えていろいろ一緒にできたら面白いなと思うんです。日本の芸能の歴史において、事務所の枠を越えたユナイトは多くはありませんが、なくていい枠組みをなくすことはBMSGのミッションの1つなので、将来的にはやっぱりやりたいです」

【お知らせ】NIKKEI STYLEでご愛読いただいてきました連載SKY-HI「Be myself, for ourselves」ですが、第38回「SKY-HI Stray Kidsとの共作、キャリア関係なく『仲間』との思い」から、日経エンタテインメント!特設サイトへ移転し、掲載しています。そちらでもどうぞよろしくお願いいたします。 https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00592/00036/

SKY-HI(日高光啓)
『八面六臂(はちめんろっぴ)』
 1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。現在、21年10月27日にリリースしたオリジナルアルバム『八面六臂(はちめんろっぴ)』を引き下げた「SKY-HI HALL TOUR 2022-八面六臂-」のツアー真っ最中。

【過去の記事一覧と「BE:FIRST」についてはこちら

(ライター 横田直子)

[日経エンタテインメント! 2022年3月号の記事を再構成]