定説くつがえす、下部マントルで地震 小笠原諸島沖

2021/11/20
ナショナルジオグラフィック日本版

2015年に小笠原諸島西方沖で発生した一連の地震は、地下数百キロで発生した超深発地震だった(PHOTOGRAPH BY FLPA, ALAMY STOCK PHOTO)

2015年5月、小笠原諸島西方沖の地下600~700キロという深さで、奇妙な連続地震が発生した。ほとんどの地震は、地表から数十キロよりも浅い部分で起こるものだが、この地震はそれよりはるかに深かった。こうした地下深くの場所では、激しい高温と高圧のため岩石は割れることがなく、地震は起こりにくいと考えられていた。

最初に起こった地震はマグニチュード7.9(気象庁マグニチュードは8.1)、震源の深さは680キロを記録した。これ自体、世界でもまれにみる超深発地震だが、続いて起こった余震の一つが、観測史上世界最深だった可能性があることが明らかになった。この発見は、2021年6月26日付で学術誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。

その深さは推定751キロで、下部マントルで発生したものと思われる。下部マントルで地震が発生することは、あるとしてもかなり珍しいと考えられている。過去に、下部マントルで地震が発生したのではと思われる兆候はあったが、ピンポイントで発生場所を特定するのは難しかった。

一部の科学者は、これが本物の余震なのか、本当に下部マントルで発生したのかを確定するにはさらに研究が必要だとしている。上部マントルと下部マントルの境界は平均して深さ660キロ付近にあるが、地球全体を見れば場所によってその深さは異なる。日本の地下では、深さ700キロ付近から下部マントルが始まっていると考えられている。2015年の地震では、このあたりでいくつかの余震が検知されているが、一つだけそれよりもずっと深い部分で発生した余震があった。

深い場所で起こる地震は、浅い場所で起こる地震ほど大きな被害をもたらすことはないが、これらを研究することで地球の地下深くで何が起こっているのかを知るのに役立つ。地震は、地球内部で起こっていることを解明する数少ない手がかりであり、下部マントルでの地震など予期しなかったことが起こるたびに、地下の世界に関する新たな知見を得ることができる。

世界最深の地震

そもそも、マグニチュード7.9の本震も、普通の地震とは違っていた。震源が深く、規模も大きく、47都道府県すべてで揺れが確認されたという。これは、気象庁による130年以上の観測史上初めてのことだ。

ほとんどの地震は、地下の浅い部分で起こる。1976年から2020年までに記録された5万6832回のなか・大規模地震のうち、70キロ以深で発生した地震は18%にすぎず、そのなかでも300キロ以深で発生したのは、4%だった。一般的に、この300キロよりも深い地震を「深発地震」としている。

1922年に、英国の天文学者であり地震学者のハーバート・ホール・ターナーが初めて深発地震を発見してから100年近くたった今も、深部での地震がなぜ起きるのかは、はっきりわかっていない。

地表近くでは、地殻プレートが互いにぶつかり合ってひずみが蓄積され、それが耐えられなくなると亀裂が生じたり岩盤がずれて地震が発生する。しかし地下深くでは、高い圧力がかかっているため揺れが生じにくい。

これにさらに高温が加わると、地下深くの岩石は硬いかたまりではなく柔らかい粘土のようにふるまうようになると、米カリフォルニア大学デービス校の地球力学者マガリ・ビレン氏は言う。同氏は今回の研究には参加していないが、ビデオインタビューで、おもちゃのスライムを使って説明してくれた。スライムを両手に持ってゆっくり引っ張ると、伸びて細長いロープのような形になるが、急に勢いよく引っ張るとちぎれてしまう。

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深発地震のメカニズム
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