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がんと仕事の両立 何でも言える社内のムードが大切

がんになっても働き続けたい~サッポロビール 村本高史さん(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

2人に1人ががんになる時代。がんと付き合いながら仕事をするには、職場の理解が重要だ。とはいえ、「うちの会社には特別な制度はないし…」という人も少なくないだろう。制度はあるにこしたことはないが、職員の働きかけから新しい取り組みが生まれ、自分らしく仕事ができる環境を作れることもある。

自身もがんになったライター、福島恵美が、がんになっても希望を持って働き続けるためのヒントを探るシリーズ。前編「がん再発を経験した元部長の『自分だからできること』」では、サッポロビールのプランニング・ディレクター、村本高史さんに自身のがんと仕事について聞いた。後編では、社内で進めている治療と仕事の両立支援について伺う。

両立支援のための取り組みに積極的に加わる

――サッポロビールでは、がんなどの治療と就労の両立支援ガイドブックを作られ、村本さんも制作に携わったと聞きました。どのような経緯で始まったのですか。

もともとのきっかけは2017年に、健保組合のデータからがんの検査や治療をした職員が予想以上に多いのが分かったことです。人事部として治療と仕事の両立支援に対応できているのかということになり、社内制度や復職までのステップをまとめたガイドブックを作ることにしたのです。実はこの時、私は違う部署にいたので、ガイドブック作成のことを知りませんでした。たまたま社内の保健師さんと話す機会があってガイドブックの話を聞き、「私も一緒に制作に入らせてほしい」とお願いし、がん経験者としての意見を申し上げました。

このガイドブックでは、出社しながら治療を続ける場合と、会社を休んで治療を行う場合を併記しています。パワーポイントで作り、社内のイントラネットに掲載し、誰でも見られるようになっています。がんになった本人向けに作成していますが、パワーポイントのノート機能(補足などをメモできる)を使い、上司向けに社員を支援するコメントを入れました。社内の相談窓口だけでなく、社外の相談先も記載しています。

――両立支援に関する取り組みは、他にもありますか。

当社は以前からダイバーシティや働き方改革に関した取り組みを行っていて、コアタイムなしのスーパーフレックス制度や時間単位の有休制度、テレワーク制度などを導入し、働きやすい制度が充実しています。ただ、短時間勤務制度は育児や介護との両立には使えたものの、治療との両立だと対象外でした。がんになった社員から「治療の時に短時間勤務制度が利用できればよかった…」という話を聞き、そうした声があるなら整備しておいた方がいいと思い、治療短時間勤務制度を提案し、労使交渉を経て、2019年1月に導入されました。

この制度はがん、脳卒中、心疾患などの身体疾患(短期的に治癒するものを除く)やケガが対象です。1日あたり2時間の短縮を上限とし、1回あたり1カ月以上2年以内で利用できます。

がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」を立ち上げ

――同じく2019年に、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」を立ち上げられました。この活動内容を教えてください。

事の発端は、2018年にがんとの共生社会についてのシンポジウムがあり、当社の取り組みを私が発表したことです。その時に保険会社のアフラックさんから、社内でがん経験者のコミュニティを作る、という話を聞いたのです。「サッポロでも作りたい」と思い、後日、そのコミュニティの会合に寄せてもらいました。参加者の皆さんは生き生きした顔をされていて、「これは素晴らしい」と。帰ってから社内のがん経験者に意見を求めたら「待っていました!」「ぜひ参加させてください」との声がありました。人事部内の了解と経営承認を得て、2019年3月に「Can Stars」を発足しました。ダイバーシティや健康経営の一環として、がん経験者同士の相互支援、がん経験者が安心して働くことができる社内体制の整備などを目的に掲げています。

具体的な活動は、社内会合を開いてがん経験者の体験や思いを共有したり、体験談をイントラネットで一般社員に発信したりしています。がん患者同士などで相互支援するピアサポート[注1]活動として、相談対応のスキルを学ぶこともあります。新型コロナの前は、一堂に会する場で行っていましたが、現在はオンライン主体で活動しています。

[注1]「ピア(peer)」は仲間や同士の意味。ピアサポートは、同じような悩みや経験を持つ人同士が支え合い、サポートし合うこと。支えられていると感じることで、不安の解消や悩みの解決につながることが期待されている。

企業合同のピアサポート研修やビールづくりプロジェクトも

――さらに村本さんは、企業合同でピアサポーター[注2]を育てるWorkCAN's(ワーキャンズ)という活動にも参加されていますね。

WorkCAN'sは、がん患者の就労支援に取り組んでいる一般社団法人CSRプロジェクトを中心に、当社やカルビー、電通などのがん経験者ら有志が参加する、いわば同じ志を持つ仲間の部活動的な運動体です。以前から他の企業のがん経験者と交流し、企業内のコミュニティでもピアサポートのスキル(傾聴、相手を受容する力など)をきちんと身に付けるべきではないかという話が出ていました。そこで、2020年9月に初めて企業合同ピアサポート研修をオンラインで開催し、39人が参加。2回目は2021年5月に行い、100人が学びました。

――そのWorkCAN'sが2021年の春、ビールづくりのプロジェクトを始められました。タイトルが「生きている喜びを心から実感できるビール」とあり、興味をそそられます。

WorkCAN'sの課外活動のようなもので、以前から一緒に取り組んでいるコアメンバーだけでなく、ワークショップを開いて一般参加者の意見も取り入れ、どんなビールがいいかを考えていきます。サッポロビールにはHOPPIN' GARAGE(ホッピンガレージ)という、お客様との共創によるビールづくりの枠組みがあり、こちらを活用します。これまでに2回のワークショップが終わり、試作品のアイデアが出ている段階で、2022年夏の商品化を目指しています。がんだけでなく、コロナも含めて様々な事情や不安を抱える人たちが、「人生いろいろあるけれど、喜びもあるよね」と実感できるような、おいしいビールになるといいなと思っています。

[注2]ピアサポートを行う人のこと

病気のことだけでなく、日ごろから何でも言い合える風土に

――がんの治療と仕事の両立ができる社会になるために、何が重要だと思われますか。

まず、知っていただきたいのは、当社はもともと、治療と仕事の両立支援を大きな柱としていたわけではありません。ダイバーシティや働き方改革などに関連してできることを見つけたり、これまでになかったことを足したりして今の取り組みがあります。両立支援のためには制度ばかりがクローズアップされがちですが、私は対話の方が重要だと思っています。制度があれば確かに安心ですが、制度をきちんと運用できるのは、社内での対話があってこそだと思います。もちろん、がんのことを開示するかどうかは本人の自由ですし、「がんだと知られて、余計な心配をかけるのではないか」と躊躇(ちゅうちょ)する気持ちも理解できます。ただ、自分の病気のことを開示できれば、必要な配慮を得ることができるので、そこはよく考えていただきたいです。

そのためには、日ごろから何でも言い合える風土づくりが大切です。病気になった社員一人ひとりにいろいろな思いがありますし、企業は多様性を理解して受け止め、少しずつでもその社員ができることを支援してもらえればと思います。

私は働くことを支える意識には、2つあると考えています。その人の所属や職位に応じた役割意識と、そもそも一人の人間としてその人の内面から湧き上がる使命感です。前回(「がん再発を経験した元部長の『自分だからできること』」)では、私の人生の使命をお伝えしましたが、大病を経て人生と向き合ったがん経験者には、自分でも気がつかないような、他者に貢献したいという使命感が隠れていると思うのです。その使命感や思いを率直な対話で引き出すことができれば、企業にプラスに働くでしょう。

――最後にがんの治療と仕事を両立している人に、アドバイスをお願いします。

がんになった人にはまず、自分の可能性を信じてもらいたいです。とはいえ、ポジティブであり続けるのは難しいので、時には自分の弱さを受け入れることも大事だと思います。そして、会社や患者の仲間、家族など、人とのつながりを大切にしてください。人とのつながりが実感できると「自分はここにいていいんだな」と存在価値を再確認できる喜びが生まれます。

(ライター 福島恵美)

村本高史さん
サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター。1987年サッポロビール入社。2009年春に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。2011年夏、人事総務部長の時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声教室に通い、食道発声法を習得。2014年から社内で「いのちを伝える会」を始め、通算50回、約600人が参加。以降、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立ち上げなど、治療と仕事の両立支援策を推進。現在、NPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事、厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」構成員を務める。

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