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恐竜絶滅は春に始まった 小惑星衝突の季節を特定

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ナショナルジオグラフィック日本版

約6600万年前に恐竜の時代を終わらせた小惑星の衝突は、北半球の春に起きた可能性が高いことが、衝突後1時間以内に死んだと思われる魚の化石を分析することで判明した。この化石は米国のノースダコタ州で見つかった。

2022年2月23日付で学術誌「ネイチャー」に発表された論文によれば、化石の骨に残る成長パターンから、魚は餌が豊富になって成長が加速した時期に死んだことがわかるため、衝突の季節は春だったと推定される。近年、この衝突が最悪のシナリオをたどった可能性を示唆する証拠が集まってきているが、今回の発見もそうした証拠の1つだ。

白亜紀末に直径10キロメートルのチクシュルーブ小惑星が現在のメキシコ沖に衝突し、地球上の生物種の75%以上が死滅した。この衝突により、想像を絶するような大地震が発生し、高さ50メートル以上の津波が北米の海岸に襲いかかった。衝突による噴煙と、それに続いて大量に降り注いだ高温の破片によって山火事が発生し、衝突地点から数百~数千キロ離れた場所まで燃え広がった。

最初の大災害に続いて、地球上の生物は恐ろしい「衝突の冬」に直面した。大気中に放出されたガスや粒子が数カ月~数年にわたって太陽の光を遮った結果、気温が約30度も低下し、中生代の生態系が根こそぎ破壊されたのだ。

これまでは、衝突の冬が起きている間に最も多くの種が絶滅したと考えられてきた。だが、小惑星が衝突した季節が北半球の春だったのであれば、北半球にすむ生物の多くはこの現象に直面するほど長くは生きられなかっただろう。春は、多くの生物が食べ物やパートナーを求めて外で活動するからだ。一方で同じ頃、南半球の動物たちは秋から冬にかけて活動を控えていたと考えられ、大災害の初期にはわずかに有利だった可能性がある。

「衝突を生き延びられなかった動物には、核(衝突)の冬を経験する機会さえありませんでした」と、論文の筆頭著者であるスウェーデン、ウプサラ大学の博士課程に在籍するメラニー・デュアリング氏は言う。「小惑星が衝突するのにこれ以上悪い季節はないと思います」

時間の中で凍った魚

今回の論文は、米ノースダコタ州のタニスで見つかった大量のチョウザメとヘラチョウザメの化石に関する最新の研究成果だ。魚のエラに入り込んだ破片は、魚たちが小惑星の衝突から約1時間以内に死んだことを示唆している。19年に米誌「ニューヨーカー」に掲載された記事によると、タニスからは、まだ学術誌に発表されていない化石が他にも多く発見されているという。

タニス化石発掘地は、古代エジプトの失われた都市タニスにちなんで名付けられた。私有地の牧場内の小さな露頭(地層や岩石が土や植物に覆われず、直接地表に現れている場所)にあり、恐竜絶滅までの数十万年を記録した地層が重なっているヘルクリーク累層の一部だ。17年にオランダ、アムステルダム自由大学の修士課程の学生だったデュアリング氏は、同大学の古生物学者ヤン・スミット氏と、タニスの発掘調査を指揮していた古生物学者のロバート・デパルマ氏を含むチームとともにタニスを訪れた。

スミット氏によると、北米のこの地域は6600万年前には、氾濫原を流れる川が刻んだ深さ10メートル以上の谷だったという。小惑星の衝突が引き起こした強力な地震は、15~30分後にはタニスにも到達した。この地震によって内海の水が川を逆流し、水中にあったあらゆるものが土に埋もれた。

一方、小惑星の破片は空高く舞い上がって大気圏に到達し、ガラス状の小さな塊になった。「テクタイト」と呼ばれるこの粒子は、衝突から約15分後に地上に降り注ぎはじめた。驚くべきことに、タニスの堆積物には、上空から地上に落ちてきたテクタイトが地面にめり込んでできた穴が今でも残っている。テクタイトは魚のエラにも入り込んでいるが、消化管や体内には見当たらないことから、魚はテクタイトが川に降り注ぎはじめた直後に死亡したと考えられる。

小惑星の衝突による破壊の手がかりは、タニスのあちこちで見つけることができる。ある堆積物層ではすべての魚が左向きに、次の層ではすべて右向きになっている。まるで、波が寄せたり返したりを繰り返している間に、魚が流されてきて土に埋もれたかのようだ。「大規模な交通事故の現場がその場で凍りついたようなものです」とデュアリング氏は説明する。

古代の魚の骨に隠された手がかり

デュアリング氏とスミット氏は、タニスのチョウザメとヘラチョウザメの化石を数点オランダに持ち帰り、骨の分析に取りかかった。これらの魚の骨の一部は、木の年輪のように周期的に層をなして成長してゆく。その層を分析して、魚が死んだ季節を特定できないかと考えたのだ。

例えば、プランクトンを濾しとって食べるヘラチョウザメの骨には、餌の化学組成の変化が記録されている。光合成を行うプランクトンの生産性は、秋から冬にかけてよりも春から夏にかけてのほうが高く、プランクトンの生産性が上がると、一般的な炭素12よりもわずかに重い同位体(中性子の数が異なる同じ原子)である炭素13の比率が高くなることがわかっている。

デュアリング氏の研究チームはヘラチョウザメの骨の各層を分析し、死亡時は炭素13の比率は増加傾向にあったが、まだピークには達していなかったことを突き止めた。これは魚が春に死んだことを示唆している。

研究チームは、魚の骨の成長パターンも分析した。デュアリング氏らは、世界で最も明るいX線を発生させる粒子加速器である、フランスのグルノーブルにある欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)を使って魚の骨のコンピューター断層撮影装置(CT)スキャンを撮影し、骨の微細構造が季節によってどのように変化するかを詳しく調べた。

春と秋は餌が豊富であるため魚の成長が早く、この時期にできた骨は穴が多くスポンジ状になっている。一方、秋から冬にかけては餌が少ないため成長が遅く、骨には「成長停止線」と呼ばれる固い層ができる。研究チームは、骨の内部から最も新しい外層まで、こうした変化を測定した。その結果、タニスの魚はどれも、成長が加速しているがまだピークには達していない時期、すなわち春に死んでいたことが明らかになった。

2つの別々の証拠がどちらも同じ季節を指していることから、研究チームは自分たちの結論に自信を深めている。論文の共著者であるウプサラ大学のデニス・フテン氏は、「自分たちの研究で季節を1つに絞り込むことができたと確信しているのは、そのためです」と話す。

北半球と南半球の差

タニスの魚に関する研究は、今回の論文だけではない。デパルマ氏が率いる別のチームが、小惑星が衝突した季節について独自に分析し、21年12月8日付で学術誌「Scientific Reports」に論文を発表している。

2本の論文は、異なる化石について、異なる手法で分析を行っているが、ほぼ同様の結論に達している。デパルマ氏の分析結果は、小惑星が春か夏に衝突したことを示唆しており、衝突時期を春と特定しているデュアリング氏の発見と食い違わない。

「独立の研究と分析が行われるのは良いことです。これらのプロジェクトがお互いを補完しあい、先史時代の世界に関する理解を深められたことをうれしく思っています」と、米フロリダ・アトランティック大学の教員で英マンチェスター大学の博士課程に在籍するデパルマ氏は電子メールでコメントしている。

ネイチャーの論文を執筆した研究者たちは、今回のデータが、白亜紀末の大絶滅のさらなる分析につながることを期待している。例えば、南半球のいくつかの地点からは、チクシュルーブ小惑星の衝突後、南半球が北半球の約2倍の速さで回復したことを示唆する形跡が見つかっている。こうした形跡は、衝突があった季節にどのくらい影響されるのだろうか?

そのヒントは、南半球の化石記録に隠されているのかもしれない。南半球の化石は、北半球に比べて研究が進んでいない。「データが不足している国々にもっと資金を提供することができれば、南半球は宝の山だと思います」とデュアリング氏は言う。「(北半球と南半球には)大きなギャップがあるのです」

一方、米スミソニアン国立自然史博物館のカーク・ジョンソン館長は、タニスの魚の化石が季節の形跡を示しているのは確かだが、6600万年前の地球は現在ほど季節変化が大きくなかったことを忘れてはならないと指摘する。当時の南極には氷冠はなく、落葉樹林が広がっていた。そう考えると、小惑星の衝突直後に南半球の動植物がどれほど有利だったかは疑問だという。

「爆弾が落ちてくるなら、屋根の修理をしているときよりも防空壕に入っているときのほうがいいという話でしょう」と、ヘルクリーク累層を専門とする古生物学者のジョンソン氏は言う。「ただ、このような主張をする人々は、白亜紀には季節変動がどれほど乏しかったかを考慮していないと思います」

ジョンソン氏は、今後の研究によってこの説を検証できると考えている。氏らは、タニスを基準として、ヘルクリーク累層の他の場所を見直し、恐竜が死んだ日の様子を詳細に保存している同様の堆積物がないかどうかを探している。

「今回のタニスの発見は非常に重要です。私たちが考えもしなかったような窓が開かれたのですから」とジョンソン氏は言う。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年2月26日付]

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