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ミャンマーで1億年前のカニ 重要な化石流出に懸念も

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ナショナルジオグラフィック日本版

1億年前のカニの化石が見つかった。ミャンマー産の琥珀(こはく)に閉じ込められていたもので、関節のある脚、爪、複眼、えらまで確認できる保存状態は「驚異的」だと、2021年10月20日付で学術誌「Science Advances」に論文を発表した米エール大学の古生物学者ハビエル・ルケ氏は言う。

おかげでルケ氏らは、現存するカニのグループ「真短尾群(Eubrachyura)」に属する新種だと突き止め、「クレタプサラ・アタナタ(Cretapsara athanata)」と命名した。クレタプサラは海にすまない非海生のカニとしては最古の可能性があり、カニが海を離れた進化の過程を知る手掛かりになると研究チームは考えている。「琥珀(こはく)に閉じ込められたカニの化石は、まさに隙間を埋める存在です」とルケ氏は話す。

琥珀は樹脂の化石だ。その中から甲殻類が見つかったという事実は驚きをもって迎えられている。「琥珀の中でカニを見つけるのは、干し草の中で針を見つけるようなものです」と米フロリダ国際大学の生物学者ヘザー・ブラッケン・グリサム氏は感想を述べている。なお、氏は今回の研究に関わっていない。

この化石には科学的価値があるだけでなく、ミャンマー産の琥珀化石の採取、購入、研究、発表を巡る倫理的な議論を浮き彫りにする存在でもある。高価な琥珀の標本は中国の市場に密輸されることが多く、一部の古生物学者は民間業者と競って購入している。こうした取引は、暴力的な人権侵害を行っているミャンマー国軍の資金源になる可能性がある。

ミャンマー国軍が21年2月に実権を掌握したことを受け、古脊椎動物学会は17年以降に採取されたミャンマーの琥珀化石に関する研究発表を一時停止するよう呼び掛けた。

17年は、ミャンマー国軍が国内にある琥珀の産地を占拠した年だ。研究チームによれば、クレタプサラを含む琥珀は15年に採取され、ミャンマー北部にあるカチン州ミッチーナの業者に売られた後、中国雲南省のロンイン琥珀博物館が購入したものだという。

カチン州からは、専門家と愛好家の心をとらえる琥珀化石が産出する。ルケ氏は17年より前に採取された琥珀化石に関する研究を発表することで、カチン州で起きている紛争への関心が高まることを期待している。

簡単ではなかったカニの海離れ

琥珀の状態などの手掛かりは、中にいる小さなカニと同じくらい示唆に富む。成体と幼生のどちらかはわかっていないが、カニは完全な姿で保存されており、樹液に閉じ込められた場所で本当に生きていたことを示している。琥珀の中に砂粒がないことや、樹液がカニの上を流れたことも、汽水域や淡水域といった海辺から離れた環境で化石化した可能性が高いことを示唆している。

海から離れることは、カニにとって大きな一歩だった。汽水域や淡水域への適応は、ただスイッチを切り替えるような単純なものではない。呼吸から水分量の調節、乾燥の防止まで、さまざまな方法を変えなければならないとルケ氏は説明する。

ブラッケン・グリサム氏によれば、「最大の障壁は浸透圧調節に関わる変化」だという。つまり、体内の水分と塩分などのバランスを管理する機能だ。また、新たな環境に進出すれば、新たな捕食者に目新しいごちそうとして狙われることは言うまでもない。

とはいえ、カニは何度も海から離れようとしてきた。現代のカニは海辺やサンゴ礁、深海だけでなく、河口や川、湖にも暮らしている。カリブ海に生息するオオガニ科のGecarcinus ruricolaのように、ほとんどの時間を陸で過ごすカニもいる。

遺伝子などの生体分子から系統樹を描く研究者たちは、非海生のカニが最初に進化したのは約1億3000万年前の白亜紀の最初期だと推測している。非海生のカニの化石は最も古いもので約7000万年前のものしか見つかっていなかったが、ミャンマーで新たな化石が発見されたことで、化石記録が遺伝学的な推定に近づいた。

化石を巡る倫理的な課題

この琥珀化石は、知られている限り最も古い非海生のカニかもしれないが、思い切って海から出たカニはこれが最初でも最後でもなかった可能性が高い。

「カニ下目は少なくとも6回、淡水域を主とした生活に適応し、少なくとも12回、陸地と汽水域を含む生息地に適応したと私たちは考えています」とルケ氏は話す。

そして、海から離れるときに驚くべき変化を経験した生物はカニだけではない。例えば、米カリフォルニア州で海と川を行き来していたニジマスが、ミシガン湖に導入されて120年足らずで遺伝子的に淡水に適応を遂げていたことが、18年に学術誌「Molecular Ecology」に発表されている。また、アマゾンカワイルカなど、淡水域に生息するクジラやイルカもいる。

海水から淡水への適応を可能にする一般的な方法は存在しないため、このような進化が繰り返されてきたという事実は注目に値する。今回、変化の真っただ中にいたと思われるクレタプサラが発見されたことで、その神秘的なプロセスをのぞき見る新たな窓が開かれた。

しかし、たとえ古代の琥珀が過去への窓を開いたとしても、科学者は琥珀化石にまつわる倫理的な課題に取り組まなければならない。琥珀の取引を巡るジレンマに加えて、この化石を所蔵する龍隠琥珀博物館がミャンマーから遠く離れていることも懸念事項だ。古生物学者の間では、国の自然史遺産として化石を本国へ返還する機運が高まっている。

琥珀化石の輸出について定めたミャンマーの法律は互いに矛盾していると研究者たちは指摘している。ミャンマー、マンダレー大学のジン・マウン・マウン・テイン氏とオーストラリア、タスマニア大学のキン・ザウ氏は21年6月4日付で学術誌「Nature Ecology and Evolution」に掲載された書簡で、重要な化石が世界中に散らばるのを防ぐため、古生物学者は琥珀に関する重要な発見をミャンマーの政府または科学当局に報告すべきだと提言している。

「そうすることで、(ミャンマー)国内の科学研究の水準が向上するのみならず、ミャンマーの人々が自国の自然遺産を国外に奪われることなく、その重要性と科学的価値をより深く理解できるようになる」と書簡には記されている。

(文 RILEY BLACK、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年10月22日付]

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