家畜馬のルーツ、DNAで特定 垣間見える人との関係

2021/11/17
ナショナルジオグラフィック日本版

内モンゴル自治区西ウジムチン旗にある繁殖センターの文化紹介イベントで疾走する馬の群れ (PHOTOGRAPH BY PENG YUAN/XINHUA VIA GETTY)

数千年前から、ウマは世界中の社会で重要な役割を果たしてきた。古代から耕作に力を貸し、人々を短い時間で遠くへと運び、戦場では兵士に闘いにおける優位性をもたらした。こうしたことを分かっていても、では家畜ウマはどこから来たのかというシンプルな疑問には、専門家はずっと頭を悩ませてきた。

最近、2つの大陸の100人以上の専門家の尽力で、その謎がようやく解けたようだ。家畜ウマのルーツは「ロシア南部」にあるという答えにたどりついたのだ。

アナトリア半島(小アジア)、イベリア半島、ユーラシア大陸のステップ地帯西部という3つの地域のいずれかが家畜ウマのルーツとして有望視され論議されてきたが、今回の発見で、その起源は、ユーラシアステップ地帯西部(ボルガ・ドン地方)だという有力な証拠が得られた。

今回の研究を率いたルドビク・オーランド氏は、フランスのトゥールーズにあるポール・サバティエ大学の分子考古学者だ。彼は同僚と協力して、ポルトガルからモンゴルまでの複数の地域で発見された古代ウマの骨格から、遺伝子情報を再現した。

その結果、ロシア南部のボルガ川とドン川を結ぶ運河に近い地域が浮かび上がった。この地方は牧畜が盛んで、ウマの家畜化を間接的に示す考古学上の証拠が以前にも見つかっていた。今回の新たなDNA調査で、現代のウマの起源が、4700年から4200年前にこの地に生息していたウマであることが明らかになった。

現在のボルガ・ドン運河周辺に住んでいた古代の人々は家畜用のウマを繁殖させると、ウマとともに新天地へと移動を始めた。こうして短期間で、この系統のウマは西ヨーロッパから東アジア以遠まで広がったと考えられている。

「とても短い期間で移動したと考えています」とオーランド氏は言う。「数千年をかけて広がったのではありません」。オーランド氏の論文は、2021年10月20日付で「ネイチャー」誌に発表された。

次のページ
優れたウマを求めて
ナショジオメルマガ