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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。人出が戻りつつある店頭ではウクライナ関連本の動きが落ち着く一方、メタバースやNFT(非代替性トークン)の本がよく売れているという。そんな中、書店員が注目するのは、金融の基本から投資・運用、企業金融までを網羅的にわかりやすく解説した本と、会社法の考え方と原則を簡明に解説した本という、2冊の入門書だった。

「教養として」がコンセプト

その2冊は、ともに日本実業出版社が刊行する野崎浩成『教養としての「金融&ファイナンス」大全』柴田和史『教養としての「会社法」入門』。いずれも「教養としての」を書名に冠し、専門家や担当者向けではなく、その分野の業務に直接かかわっていない一般ビジネスパーソン向けの入門書という性格の本だ。同社はこれまでも法務系入門書として「税法」「所得税法」「労働法」で同じく「教養としての」を冠した本を刊行しており、会社法はその第4弾と位置づけられている。

金融・財務、法務には苦手意識を持つビジネスパーソンが多いだろう。金融や財務は数字が関係し、数学的素養が必要と思われて文系のビジネスパーソンには近寄りがたい。一方の法務も条文解釈やら判例やら知識の壁が大きく立ちはだかる。だが、いずれも本当はビジネスを進める上で知っておいたほうがよい専門知だ。2つの本はそうしたハードルを下げながら、読みやすい形で本質を伝える点で共通する。

まず「金融&ファイナンス」大全の方から見ていこう。著者の野崎氏は東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科教授。銀行を振り出しに長く金融業界に身を置き、大学に転じる前はシティグループ証券などでアナリストとして活躍した。

冒頭で著者は、金融関係の基本書は淡々と書きつづられているものが多く、途中で飽きてしまうことが少なくないと語る。そこで、お金にまつわる素朴な疑問を並べるところからスタートし、「金融のしくみ」「投資・運用の視点」「コーポレート・ファイナンスの視点」の3部仕立てで金融・ファイナンスのすべてがわかる構成にした。そして本文では数式をほぼ登場させず、巻末に「数学的補足コーナー」を設けて参照できるようにし、数学嫌いでも読める工夫を凝らしている。

3部全17章、500ページを超えるボリューム感は読みごたえ十分だが、そのわりに読みやすく感じられるのは折々にコラムを差し挟んで、今日的な話題や論点を巧みに織り込んでいるためだろう。本文の中でもPayPayなどのキャッシュレス決済手段はお金かといった素朴な疑問を交えて話を進め、日常のふとした疑問を出発点に金融・ファイナンスの全体像にたどり着く書き方を心がけている。

ビジネス書の棚端の平台で店頭販促(POP)をつけ、2冊ずつ隣に並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス書の棚端の平台で店頭販促(POP)をつけ、2冊ずつ隣に並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

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