スタートアップ企業が事業戦略に行き詰まり、軌道修正を余儀なくされることがあります。ネットオークションの会社として起業したはずのディー・エヌ・エー(DeNA)が、今では、まるで違う会社にみえるのは、優れた事例と言えるでしょう。

反対の場合もあります。例えば、大手企業からジョイントベンチャー(JV)を持ちかけられたスタートアップ企業が投資を決断したものの、赤字が続き、その結果、大手企業が出資比率を高め、創業者が情熱を失い事業を投げ捨てるようなケースもよく聞きます。

優れた起業家はこうした経験をも糧として、それまでとは全く異なるアイデアや企画に取り組むことになります。あるネット番組で、著名IT起業家が、スタートアップ企業に大切な条件として、「しつっこさ」を挙げていました。ITは日々進歩するため、古いしがらみや、古い思考法はすぐに捨て去り、新たな発見を追求し続ける「しつっこさ」が必要なのです。

優秀な人材やお金が自然に集まってくる

業界ナンバーワンのような大きな成功体験を持ちながら、どんどんピボットできる企業の経営者――。そういう人のもとには優秀な人材やお金が自然に集まってくるものです。

ある大手企業の最高経営責任者(CEO)から、成功する投資の『鉄則』を教えてもらったことがあります。成功体験をもつ経営者が、ピボットを繰り返した上で、リノベーションに再挑戦しようとするときこそが、投資のタイミングなのだそうです。たしかに、スティーブ・ジョブズが復帰した1997年以降のアップルをみれば、その「投資の基本」もうなずけます。

ですから、もし私が小さな「ピボット」を数回経験した後、本格的に新規IT事業を興しネットビジネスに復帰するとしたら、そして医療の世界に、アフターコロナ禍にふさわしい後発だからできる「リノベーション」をもたらせることができるとしたら、それ以上の社会貢献はなく、とても名誉なことであろうと考えております。

鈴木吉彦
1957年山形県生まれ。83年慶大医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病治療を専門に研さんを積む。 その後、国立栄養研究所、日本医科大学老人病研究所(元客員教授)などを経て、現在はHDCアトラスクリニック(東京・千代田)の院長として診療にあたる。

「ITが好き、な医師が語る世界の未来」の記事一覧はこちら

鈴木医師が院長を務めるHDCアトラスクリニックのHPでは、専門である糖尿病に関する情報を幅広く紹介しています。

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
人生を豊かにするスローエイジング最前線