検索大手、米Google(グーグル)も当初は後発でした。1998年から2001年ごろにかけて、既にたくさんの優れた検索エンジンがありました。米国立医学図書館(NLM)が運営する医学・生物系論文のデータベース「PubMed(パブメド)」もそのひとつです。

1990年代末、私がNLMを訪問した際、引用件数が多い順に論文を検索できる機能を目にしたときの驚きは今なお記憶に鮮明です。そうした機能は当時の日本では利用できなかった時代のことです。そうした数ある検索エンジンの中で、いわば最後発として2002年ごろに登場したグーグルは、大量のサーバを寒い国に設けて冷却コストを抑え、幾つものCPU(中央演算処理装置)を使った並列処理で検索速度を上げ、さらにウェブサイトの閲覧履歴を保存する「クッキー」を駆使した広告システムで、市場を支配するようになったのです。

このように、ネット社会は常に新陳代謝を繰り返す、生き物のようです。しかも、オセロゲームのように、ひとつのアイデアだけで、業界の常識を覆すことができます。例えば、米求人検索サイト「Indeed(インディード)」の検索窓と人気のキーワードを並べただけのトップ画面をみて、そのシンプルさに驚いた人は少なくなかったと思います。

医療の世界ではどうなのか?

医療の世界では、どうなのでしょうか? 私が知るかぎり、リノベーションを成功させた例はないようです。海外の進んだ事業モデルを国内に持ち込む「タイムマシン経営」という経営手法があります。これは、オリジナルを他人に委ねる経営のことで、私の好きなビジネススタイルではありません。日本での医療業界のいわゆるプラットフォーマーをみても、誰かのまねをしたものが多いように思えます。

例えば、SNS(交流サイト)では既知となっている利用者同士がつながる機能や技術を、医師と製薬会社のMR(医薬情報担当者)の関係に持ち込んだだけで、ビジネスモデル特許が成立すると考える関係者も少なくないようです。

医療系ネットサービスでは、この20年以上、革新的なアイデアは、見受けられないように思えます。こうした時代だからこそ、この分野におけるリノベーションの発想が求められているのだと思います。

最近よく「ピボット」という言葉を耳にします。バスケットでは軸足を中心に片足を動かし体の向きを変える技術を指しますが、ビジネスの世界では、方針転換や路線変更を意味します。

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