変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

日経ウーマン
「聞く」メリットの根拠が書かれた本『LISTEN』が話題。監訳者の篠田真貴子さんに、「聞く力」を高める必要性と、磨き方のコツを聞きました。

編集部(以下、編)  日経WOMANのアンケート(「本音を引き出し、人間関係も深まる『聞く力』の磨き方」)で4割の読者が、「聞く力があるか分からない」との回答でした。

篠田さん(以下、篠) 学校で「聞く」について学ぶ機会はなかったと思うんです。分からないという気持ちは理解できます。

 そんな背景も、今「聞く」ことが注目されている状況につながっていると。

 自分の話をしっかり聞いてもらった体験が少ない人も多いと思うんですよね。後は、コロナによる自粛で孤独を感じた人は多いと思いますが、『LISTEN』には、孤独を感じるときは人の話を「聞きたい」という欲求が高まるという内容が紹介されています。「話を聞く機会」が限られた渇望感も手伝って、「聞く」に意識が向いたことも考えられます。

 『LISTEN』の読者はどう感じたのでしょう。

『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』(ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳/日経BP)は、7万3000部を突破。ジャーナリストである著者が膨大な文献を読み、さまざまな職業の人への取材を通じて、「聞く」行為の意味を浮き彫りにした1冊。

『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』(ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳/日経BP)は、7万3000部を突破。ジャーナリストである著者が膨大な文献を読み、さまざまな職業の人への取材を通じて、「聞く」行為の意味を浮き彫りにした1冊。

 感想が書かれたSNSを読むと、大半の人が「自分はどれだけ人の話を聞けていたのか」と内省しています。「今度、実家に帰って親の話を聞こう」など、「聞く」というキーワードから、多くの人が大切な人との関係性を想起された点も興味深かったです。

 「聞く」ことで人間関係を良好にする秘訣は?

 純粋に自分の話に興味を寄せて、肯定的に受け止めてくれて、「なるほど」と学んでくれたら相手のことを好きになりますよね。人間関係の土台を築く「聞く」とは、「好奇心を持つ」「相手の話を受け止める」「学びたいといった謙虚さ」だと思います。自分と異なる考え方の話をされると、脳は反射的に「この人、全然分かってない」などの反応をすることが研究で分かっていますが、違いを楽しみ、「別の角度から見ればそういう意見もあるか」と学んだ姿勢を見せれば、話し手は聞き手を信頼し、対話にもつながりやすくなる。その最後まで話を聞くポイントが、「好奇心」です。好奇心旺盛でなくても、「知らなかったこと」「気づかなかった部分」「意外性」を、「それで?」とエピソードを聞き、頭の中で映像化できれば楽しくなります。

 人の悩みを聞くケースもありますが、ポイントは?

 「共感」でしょうか。海外の心理学者の原書には、子どもの予防接種や治療を拒絶する親や患者の話を、医師が「嫌だと思った背景や不安」を共感しながら聞き、その上で治療などの効用を説明すると、約7割の親や患者が協力したと書かれていました。自分の大切な感情や価値観を認めてもらい、共感してもらうと安心感を得やすい。世界情勢による大きな不安が渦巻く今だからこそ、「聞く」がもたらす効果も大きいでしょう。でもまずは難しく考えず、1日3分でいいので雑談から「聞く」を意識するといいと思います。

この人に聞きました

篠田真貴子さん
エール取締役
慶応義塾大学経済学部卒業、米ペンシルバニア大学ウォートン校MBA、米ジョンズ・ホプキンス大学国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ほぼ日(旧・糸井重里事務所)取締役CFOなどを経て現職。

「聞く力」に関心が高まっている理由

「聞く」ことのさまざまな効用が知られるようになった

学校では、発表などで「話す」ことは多少学んでも、「聞く」について考える機会はほぼなかった。「『聞く』のあらゆる効用が知られ、その重要性を再認識した人が増えたと思います」。

コロナ禍で対面の機会が減り、深いコミュニケーションの欲求が高まった

「コロナ禍で対面の機会が減って、人に自分のことを話すだけでなく、人の考えや感情に耳を傾ける機会も失い、寂しさを感じている人が増えたように思います」

「聞く力」を高めるとどんないいことがある?

○孤独を防ぐ
SNSで気軽に発信できる世の中だが、つながりを感じられず孤独を覚える人も少なくない。「人の考えや感情を聞くことでつながりを感じ、孤独を防ぐことになります」。

○人間関係の土台になる
「聞く」とは相手に好奇心を持ち、受け止め、学ぼうとすること。「そうした態度や姿勢でいると好かれやすく、信頼されやすいので、人間関係を築きやすくなります」。

○問題解決力が上がる
「米ヴァンダービルト大学の研究では、ひとりで問題を考えるより、話を聞いてくれる人がいたほうが、しっかりした根拠を伴う詳細な解き方を説明できるという結果に」

○チームの生産性が上がる
「Googleの社内調査では、生産性の高いチームほどメンバーの発言量が大体同じで、話を聞き合っていました。しかも、互いの感情を読み取る能力が長けているとも」

○人生がぐんと楽しくなる
学びや驚きがあると期待を持って聞くと楽しくなり、知識が増えて視野が広がると自分も面白い人間に。「聞かせてもらってありがとうと感謝するようになりました」。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック