唱えて安心の言葉、肩の力が抜けた言葉も支えに

仕事と育児の両立生活では、職場でも家事や育児でもいろいろな課題が生じがち。そんなときに「唱えると安心する」「つらいときにつぶやく」と挙がったのが「大丈夫」という一言。代わりに、「どうにかなる」「うまくいかない日は連日続かない」「時間が解決してくれる」などの言葉を支えとして挙げた人もいる。

意外に多かったのは、周囲の言葉で肩の力が抜けたという声だ。小学3年生を育てる40代の女性は、子育ての問題にぶつかったとき、「できなくていい。子どもと成長すればいい」という母の言葉で、「あせらないでがんばろう」と思えるように。このほか「1人だけで頑張らないで、もっと周りに手伝ってもらえば?」「保母さん(現在の保育士)はプロよ」(いずれも母から)、「○○ちゃんママは十分がんばっていますよ。たまにはお総菜を買ったって全然大丈夫!」(保育園の担任の先生から)など表現は様々ながら、自身ですべてを抱え込まなくていいと伝える言葉に力を得たとの声が目立った。

先輩ワーキングマザーのアドバイスは参考になる点が多いうえ、心に響く。中学1年生を育てる40代の女性は、かつて初の出産を経て仕事に復帰した頃、「仕事も家事もきっちりこなさないと」と思うあまり、「きっちり」を目指しては「手からこぼれるもの」が出て自己嫌悪、という悪循環に陥っていた。

あるとき、会社の先輩ママから「目指すのは完璧でなく最低ラインでいい。余裕が出来たら最低ラインを上げていけばいい」といった趣旨の言葉をかけてもらい、「自分で自分の首を絞めていた」状態から脱却できた。自分にとって、その先輩ママは「いつも完璧に近く見えていた」ので意外な言葉だったとか。いまは自身が職場の後輩ママに同様の言葉をかけるようにしている。同じような理由により、心がほぐれた言葉として「ホコリで人は死なない」を挙げる声も複数あった。

生活変化を「見える化」、バランス取るヒントに

「自分で言うのも何ですが……」。パートで働く妻に代わって、とばかりに自身が妻にかけた言葉をシェアしてくれた男性も。子どもは3人で末子は19歳という50代の男性だ。食事の準備を巡り、愚痴をこぼしていた妻に言った「ノルマじゃないんだから休みたいときは言ってくれ。俺がやるから」という言葉がそれ。「妻の笑顔が戻った」と「効果」を伝えてくれた。

家族で出かけるのもいいけど、今日は割り切って休んで」。小学2年生と年中の子どもを育てる30代の女性は、夫がこんな風に切り出して「リフレッシュすることは家族のケアと同じか、それ以上に大事」と1人時間をプレゼントしてくれたエピソードを共有してくれた。「図書館で本を読めてリフレッシュできました」

この家庭のように、リフレッシュも含めて家事や育児など生活のあれこれを夫婦間でシェアしたいところ。上手に分担するためのヒントはあるだろうか。「保育園を考える親の会」の代表、渡邊寛子さんに聞いてみた。

保育園を考える親の会の渡邊寛子さんは「子育てを支えてくれた恩返しをしたい」と同会の代表に

渡邊さんは、製薬会社でMR(医薬情報担当者)として働きながら、小学2年生から中学3年生まで3人の子どもを育てるワーキングマザー。同会での活動や自身の経験を踏まえて、「両立生活をスムーズに送るうえでは『可視化(見える化)』『共有』『前倒し』がポイントになる」と語る。

夫婦間の分担を決める際は、このうちの「可視化」が役立つという。やり方は簡単だ。夫婦それぞれの1日の流れについて、育児をする前と後との生活変化が把握できる表を作るのだ。エクセルなどで縦軸に時間の目盛りを書き入れた長方形を、「子どもが生まれる前の夫」「子どもが生まれる前の妻」「子育てしながらの夫(予想)」「子育てしながらの妻(予想)」など4パターン設け、それぞれに1日の流れを書き込んでいく。それらを並べることでビフォー・アフターの生活変化を可視化する訳だ。

実はこれは、同会で毎年開いている「はじめての保育園」で来場者に提供している表のノウハウにあたるという。「『家事が大変』など言葉で伝えるだけの場合より、時間で見ると生活変化や負担がハッキリ分かって夫婦の目線を合わせやくなります」と渡邊さん。表で見える化すれば、保育園の迎えをはじめ「物理的に仕事は無理」という時間も把握しやすくなり、生活実態に合わせた工夫を考える際も役立つ。

ところで、渡邊さんにも今回集まった様々な言葉への感想を聞いてみた。「宝の山だと思います。かつての自分に聞かせてあげたい言葉ばかり」。特に共感したのは、「産後、孤独な育児でいっぱいいっぱいで、家事もろくに手が回らず無力感しか感じていなかった」という、いまは3歳になった子ども育てる40代女性が挙げた「1日の終わりに赤ちゃんが元気に生きていれば満点」との言葉だという。

「職場でも『元気でいることが1番』という言葉をかけてくれる人は意外に少ない。けれど、家族皆が生きているだけで100点だし、しかも笑っていられたなら1000点満点だと思います」。「笑顔」は渡邊さんにとって、1つのキーワードのようだ。両立生活で「仕事をセーブしなければならない」など意に反する課題が持ち上がったときには、「家族が笑顔でいられるかどうか」を判断のよりどころにして、自分はどうしたいかを考えるという。これも1つのヒントになりそうだ。

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脱・孤独な育児 周りが応援する時代に