ミュージカルの稽古場でも大きな反響
ゴールデンタイムで3時間の生放送だったので、僕の周りでも反響が大きかったです。次の日、6月9日から帝国劇場で開幕するミュージカル『ガイズ&ドールズ』の稽古場に行ったら、カンパニーのみんなから「見ました」とか「涙が出てしようがなかった」と言われて、「僕もエントリーしたんですよ」という方もいました。ダンスが好きな人やかかわっている人が多いことを実感したし、何よりたくさんの人に楽しんでもらえたのはMCとしてもうれしいことでした。
ダンスが素晴らしいのは、自分たちが生きていることを実感できるからだと思います。もちろん歌やお芝居もそうですけど、躍動感という点ではダンスに勝るものはなくて、明るいものでも暗いものでも生命の力が伝わってきます。身体表現だけなので、言葉がない強さもあります。歌やお芝居は言葉の芸術でもあるのですが、ダンスには言葉を超える表現の可能性があって、そこは理屈じゃなくて本能的なものなので、強いなと思いました。
番組の最後では、「次回またお会いしましょう」と言いました。本当に次回がまたあってほしいし、ぜひまたかかわりたいですね。僕がこれからすごいパフォーマンスでダンス界に貢献するのは難しいでしょうが、同じ表現者として、今回のようにサポートしたり、盛り上げたりという立場でもお役に立てたらうれしいです。
『夢をかける』 井上芳雄・著
ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に2020年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(日経BP/2970円・税込み)

(日経BP/2970円・税込み)
井上芳雄
1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)、『夢をかける』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第117回は6月18日(土)の予定です。