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ひらめきは一人では生まれにくい 巻きこむのが大事

脳科学者に聞く「脳」の活性化術

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)
新たな市場ニーズを探ったり、これまでにない企画を求められたりするとき、「いいアイデアをひねり出したい」「ひらめきたい」と強く願うほど思考が硬直し、何もできなくなるといった経験は誰しもあるだろう。公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんは、「自分の脳だけでひらめこうと思いすぎていませんか?」と話す。私たちの脳は広く世界に開かれた「情報器官」である、という発想に切り替え、人と話すなどどんどんアウトプットすることも効果的だという。篠原さんに新発想の「ひらめく方法」について聞いていこう。

たくさん情報を入れれば、ひらめきの元は勝手に生まれてくる

――前回(「『ひらめき脳』は『居眠り』と『ながら』で作られる?」)は、「ひらめくための秘策」として、「ぼーっとすること」「まどろむこと」が効果的であるということや、ひらめくためには神経ネットワークがつながりあうための素材(情報)を入れる作業も不可欠である、ということを教えていただきました。

資料を読み込んだり、ああでもないこうでもない、と頭を抱えるプロセスも避けて通ることはできないのだなと納得するとともに、もう一つ伺いたいことがあります。「資料も読んだ。とことん考えた。けれども、いいアイデアが出てこない。最初の1行がどうしても書けない」というときがかなりの頻度であるのですが……。

篠原さん それは、ひらめくための素材がそろいきっていないためかもしれません。

また、「これを書いたら、いいことが起きる」という達成への予感が出来上がっていたなら、あれこれ考えなくても自然と「書きはじめる」ことが起こります。その達成への予感が未完成だったという可能性もありますね。

というのも、脳科学でいうと、「やる気は行動と快感の結びつきによって起きる」からです。そのためには、「行動をしたら快感を得た」という体験を繰り返すことが重要です。体験の繰り返しによって、「まず1行書く」ことがさほど負担感なくできるようになってきます。

そして1行書いてみると、足りない情報は何かがわかり、再びリサーチする、この繰り返しで、いわゆる「脳の拡張作業」が行われていきます。

――「脳の拡張作業」。わからないことを繰り返し調べると脳の拡張が起こっていくのですか?

篠原さん 統計処理をするのだって、結局のところデータを集めて脳の拡張を行っているわけです。それを行ううちに「つながり」が自動的に生まれ、ひらめくときがやってきます。

一方で、私は最近思うのですが、「ひらめかない」「アイデアが浮かばない」「書けない」と行き詰まる方の多くは、脳を「固定的にとらえてしまっている」状態ではないかということです。

――脳を固定的にとらえる――。それはどういうことですか。

篠原さん 脳って、どんなものだと思いますか? 自分の頭蓋骨の中の臓器、とだけ思っていたら、それは違います。脳は頭蓋骨の中だけにある「固定的なもの」ではなく、一種の「情報処理器官」であって、その情報ネットワークは世界とつながっています。インターネットしかり、SNSしかり。星空や月を眺めることによっても何らかの情報が入ってきています。脳から始まる空間的広がりは無限である、と考えてみませんか。何かが足りていないと思えばその情報にアクセスすればいいのです。「1行目が書けない」、すなわち情報のつながりがまだ見えてこないのなら、たくさん情報を入れれば、何らかのつながりが「勝手に」出来上がっていく。それが脳の良さなのです。

ひらめきに固有性や所有権を持とうとしないほうがいい

――脳はいろいろな情報処理をする「頑張り屋」だと思っていたのですが、確かに世界中の情報とやりとりしているという面もあるのですね。とても新鮮なことを聞いたような気がします。確かに脳を固定的にとらえ、「とにかく自分の頭で思いつこう」としていたのですが、もっと他の情報ネットワークに頼っていいということですね。

篠原さん 例えば今こうして僕とあなたが話しているときにも互いに情報ネットワークをやりとりしていて、どこかでひらめきが起こり、それが伝播していくわけです。自分の脳の中で必ずしもひらめく必要はなく、ネットで気軽に情報を求めることだって「集団知」を生かすということですよね。

よく、「トップクリエーターの頭の中ではつねにひらめきが起こっている」なんて思われがちですが、そんなことはない。個体の持っている影響力なんてそんなに大きくないのです。広くつながりあう情報ネットワークのたまたまの結節点が自分の脳で、同じようなひらめきを持つ人はそこら中にいて当たり前なのです。

――例えるなら、パソコンであってもスマホであっても、内蔵メモリにデータを詰め込むのではなく、クラウド上に保存したり、ネットワークを広げる、というようなことでしょうか?

篠原さん その通りです。

AI(人工知能)には、「教師あり学習」という、正解を教えるシステムがあります。「これはブタであり、イヌではない」というような情報の学習をとにかく数多くやっていくと、AIの中に新たなカテゴリー判断が生まれます。最近の脳科学の見方からすると、「カテゴリーを覚えるのではなく、カテゴリーを作ることこそ脳の働きの根幹である」、ということ。となると、外界とつながり、ネットワークを広げ、情報をさかんにやりとりしないでいると脳はどんどん固定化し、ひらめきにくい脳になってしまいます。

僕たち学者の感覚から言っても、「発見は自分の手でしなければ」という気分にとかくなりがちなのですが、そもそも科学だって先人の知恵の蓄積を受け継ぎながらどこかの段階で誰かがひらめく、という連続で成り立ってきたわけで、もともとそういった仕組みであったことが今の時代になり顕在化してきたのだと思います。

このような考え方はこれからの企業にも必要です。市場ニーズに合わせる、というよりもニーズを新たに作り出さないといけない時代ですからね。ひらめきに固有性や所有権を持とうとするのはナンセンス。やめたほうがいいと思います。

他者を巻きこむほうがひらめきやすく、記憶も定着しやすい

――先ほど、「お互いに話すと情報ネットワークがつながりあい、ひらめきに変わる」とお話しくださいましたが、だとすると「人と話す」というのはとても有効なのですね。自分ひとりで抱え込んで、いつかやってくるひらめきを待つより、まとまらない状態でもとにかくアウトプットすることが効果的ということですか。

篠原さん まさにその通りです。我々は「考えて、ひらめく」とか「考えて、書く」というふうにまず「考え」が先に来て「表現する」ことが後に来ると発想しがちです。つまり、ひらめきとは自我を中心としたモデルと思っているのですが、AIでも「共起現象」がたやすく起こることがわかっています。

共起現象とは、例えば選挙に関する話題の中では「選挙」という言葉と「出馬」という言葉が同時に出現するようなことを言います。AIの自然言語処理のパターンでは、このように、ある単語が出たら、その単語から同時に「共起現象」が起こる仕組みがあります。おそらく我々の脳も、話したり書いたり、とアウトプットしないことには共起現象は起こりにくい。出すことが大事です。

以前、「不安な気持ちはいったん外在化すること」とお話ししましたが、それと同じ話。一回出してしまえばそこから連鎖し、ひらめきや解決に勝手につながっていくのです。

――そのアウトプットの仕方なのですが、「話す」「書く」「パソコンに打ち出す」など、表現手段による脳への作用の違いはあるのでしょうか。

篠原さん それに関しては僕の知る限り、調べられていないと思います。

ただ、「話す」つまり「他者に説明する」ことで、前頭前野の「ワーキングメモリ[注1]」が深く使われるということが起こります。するとネットワークの広がりが大きくなり、ひらめきも増しやすく、記憶の定着も促進されるでしょう。

[注1]ワーキングメモリとは、脳の前頭前野が強くかかわる短期メモリのこと。作業記憶とも言う。少し前にした記憶を、作業のために生かす、いわゆる「脳のメモ帳」「脳の作業台」。ただし脳のメモ帳の枚数は年齢に関係なく誰もが3~4枚しか持っていないため、私たちは「あれ」「これ」「それ」ぐらいしか同時に処理することができない。

――確かに、話したり、他者に説明しようとしたりすることで「わかっていること、わかっていないこと」が見えてきますね。「書く」ことはどうでしょう。

篠原さん 自分で原稿を書くことも、結局のところ、他者への説明ですよね。「伝わるかな」「ここはちょっと言葉を言い換えたほうがいいだろう」というふうに原稿を読む他者の脳みそを想像するぶん、ワーキングメモリが深く使われます。

つまりは、極力、「自己完結しようとせず、他者を巻きこむのがいい」ということです。脳を固定化していると、外側から情報を取り込もう、という感覚になりますが、「既にたくさんある情報とつながっちゃえ!」ぐらいの気持ちのほうが、ひらめきは起こりやすいのです。

――ああでもない、こうでもない、と書き殴ったり、人に説明したりするのを「無駄な時間」と考えるのは間違いですね。ひらめきの元になるし、記憶の定着まで良くなるとは。

篠原さん すごく考えて悩んで書いた原稿は忘れない、ということはありませんか。あっさりスルーで楽々書いたことなんて、書いたことすら忘れちゃう(笑)。

――その通りですね。自分だけでひらめく必要がない、というのは目からウロコでした。

◇   ◇   ◇

次回は、「上司と部下」という関係のなかで悩むことが多い「褒める」ことと脳の関係、何をどう褒めると相手のモチベーションを高められるのかについて聞く。

(ライター 柳本操)

篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探究する。

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