日経ナショナル ジオグラフィック社

紀元前6世紀頃に誕生し、ヒンドゥー教と多くの共通点を持つジャイナ教では、ディワリは、ジャイナ教の開祖であるマハーヴィーラがニルヴァーナ(涅槃、ねはん)に達したことを記念する祭りだ。

そして同じく紀元前6世紀頃にヒンドゥー教への反動から生まれたとも言われる仏教では、ディワリは、紀元前3世紀に古代インドを支配したアショーカ王が仏教に帰依したことを祝っている。

ディワリをめぐるさまざまな物語とは別に、ディワリはヒンドゥー教の富と豊穣(ほうじょう)の女神ラクシュミー神を称える祭りでもある。農耕社会が始まったばかりの頃のインドでは、冬の前の最後の収穫期と重なるディワリは、ラクシュミー神に幸運を祈る時でもあった。今日、多くのインド企業がディワリを会計年度の初日としている。

ディワリの祝い方

ディワリにまつわる伝説と同様、祝い方も地域ごとに異なる。しかし家族が集まり、たくさんのお菓子が並べられ、精神的な闇から一家を守る内なる光の象徴として、素焼きのランプに火をともす点は同じだ。

2020年11月、インドのアフマダバードの工房で焼物師が素焼きのランプを並べている。ディワリの間、家々や寺院を飾るランプだ(Photograph by Amit Dave, Reuters)

どの地域においても、ディワリの一日一日はそれぞれ特別な意味を持っている。初日、人々はラクシュミー神に祈りをささげ、お菓子を焼き、家を掃除する。2日目には、清められた家にランプを並べ、花びらや色付きの砂、粉、米を使って、床にランゴーリという文様を描く。

ディワリの時、多くの人は花びらや色付きの粉、米、砂などを使って、床にランゴーリという複雑で色鮮やかな文様を描く(Photograph by Jodi Cobb, Nat Geo Image Collection)

一番重要なのは3日目だ。この日はラクシュミー神に祈るために寺院に行く人もいれば、家族や友人とともにごちそうを食べたり、花火を楽しんだりする人もいる。2日目に並べたランプに火をともすのもこの日だ。

多くの人にとって4日目は新年の始まりだ。新年の挨拶を交わし、贈り物を交換する。そして最終日の5日目は兄弟姉妹の絆を祝う。

今やディワリは、米国の感謝祭やクリスマスに匹敵するインド最大のホリデーシーズンだ。買い物客にとってお得なセールが行われ、インドだけでなく世界中でさまざまな催しが開かれる。花火は祭りの目玉だが、特にニューデリーなどでは、大気汚染をさらに悪化させているという批判もある。(こうした批判を受け、近年、ニューデリーでは爆竹を禁止している。)

それでも祭りは続く。光は闇に打ち勝つというディワリの精神は、世界共通だ。

(文 Amy McKeever、訳 三好由美子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年10月20日付]