検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

天童さんと山内君に学ぶ 演歌のこぶし(井上芳雄)

第122回

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

井上芳雄です。しばらくミュージカルの公演が続きましたが、9月はまた違ったジャンルに挑戦します。9月14日には天童よしみさん、山内惠介君との3人で「スーパー・ボーカル・トリオ・コンサート」と題して、演歌、ミュージカルからロック、ポップスや世界の名曲までいろんなジャンルを歌うコンサートを開きます。9月16~19日は橋爪功さんの朗読劇企画「リーディングプロジェクト」の第1弾公演に出演します。

「スーパー・ボーカル・トリオ・コンサート」の企画が立ち上がったのは3年ほど前なので、コロナ禍の前になります。天童さんや山内君とは、NHKの音楽番組『うたコン』や『はやウタ』でご一緒することがあって、リハーサルで聴いた歌のうまさにびっくりしました。それで僕のラジオ番組にゲストに来ていただいたりするうちに、「何か一緒にできたらいいですね」という話になり、今回のコンサートにつながりました。天童さんと山内君は普段から仲がいいので、3人で意気投合したという感じです。

天童さんは、歌が上手なのはもちろん知っていましたけど、実際に生で聴いたときの突き抜けるような歌声は本当に衝撃的でした。山内君と僕は同年代で、同じ福岡の出身。「演歌界の貴公子」と呼ばれているのも、プリンスの僕としては身近に感じます(笑)。 

3人でのコンサートはもちろん初めて。僕も実現するとは思っていなかったので、いまだにちょっと不思議な感じではあります。違うジャンルの方々ですが、僕は歌がうまい人と一緒に歌うのが大好きなので、ただただリハ-サルで聴いていたときと同じように「うわー、すごいな」という経験をしてみたいという思いが強いですね。

お話を聞くと、演歌の世界はミュージカル界と成り立ちが違っていて、お客さまに聴いていただくやり方が全く違うのも新鮮でした。演歌の皆さんは基本的には1年に1枚新曲のCDを出して、キャンペーンやコンサートで全国を回って、そのシングルを売り続けて、最終的には(NHK)紅白(歌合戦)を目指すそうです。2~3カ月で演目を変えていく演劇界とはまた違うサイクルで活動されています。お2人も東京にいるほうが短いんじゃないかというくらい、忙しく全国を飛び回っています。僕も劇場の関係で仕事のスケジュールが決まるのが早いので、そういう3人が一堂に会するという点でも、希有(けう)なコンサートの機会です。

天童さん、山内君と歌う『ボヘミアン・ラプソディ』

曲目はすでに一部が発表されています。決めるに当たっては、最初みんなで集まって、どんなことをやりたいか話しました。そこで出たのが、それぞれが自分のジャンルを歌うのは前提として、お互いのジャンルに挑戦してみようと。僕は演歌を歌ってみます。

演歌といえばこぶしですよね。僕は「うーん」とうなる、誰でもできるものかと思っていたのですが、そうではありませんでした。こぶしが回るのは1つの技術で、いくらやっても回らない人もいるそうです。つまり特殊技能で、天童さんはそれがすごく上手です。

天童さんに、どうやってこぶしを回せるようになったんですかと聞いたら、小さいころから親に演歌を聴かされて育っていて、お父さんの自転車の後ろに乗って、ガタン、ゴトンと揺れるのに合わせて歌っていたら回るようになった、と教えてくれました。こぶしの種類も、激しいものからシンプルなものまでいろいろあるそうです。山内君を見ていると、のどだけでこぶしを回すのではなくて、体全体で回しています。どうやっているのか、今回学んでみようと思っています。もちろん、すぐに回るとは考えていませんけど。

本当にいい曲を3人で歌うコーナーもたくさんあって、J-POP、洋楽からシャンソン、ロックまで、幅広いジャンルの世界の名曲を歌うことになっています。なかでも目玉というか、一番大変そうなのがクイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』を3人で歌うことです。これは大チャレンジでしょうね。

ミュージカルからのデュエットだと、僕と天童さんで『ルドルフ ザ・ラスト・キス』から『サムシング・モア』を歌います。天童さんは何を歌ってもうまいので、ミュージカルの曲も絶対にいいと思うんです。日本であれだけ地声が伸びやかに出る人はそういません。ダイアナ・ロスさんのようなモータウン系の曲も合うんじゃないかなと思って、『ワン・ナイト・オンリー』をお願いしました。ジャンルを超えて、素晴らしい歌声を聴かせてくれるに違いありません。

山内君とは『エリザベート』から『闇が広がる』をデュエットします。彼は演歌の中でも、すごく特徴のある歌声です。哀愁というか色気というか、歌声そのものに独自の色があります。もちろん僕たちミュージカル俳優の声にもあるとは思いますが、普段は役の色で歌うので、強い色が出るようには歌いません。でも演歌は歌い方が全然違うので、山内君の声を聴いていると「こういう歌声っていいな」と思います。その山内君がミュージカルやポップスを歌ったときに、またどういう色になるのか、楽しみです。

番組で歌うときももちろん一生懸命やるのですが、その場限りで終わってしまうのが残念でした。でもコンサートだと、3人でいろんな打ち合わせをしたり、グループラインをつくって「この曲はどういうふうに歌おうか」と相談したり、ああだこうだとやっていると、また違ったつながりが生まれてくるので、とても楽しいです。

まずはやってみようという、お2人の姿勢や歌への向き合い方も勉強になります。僕が、「『ボヘミアン・ラプソディ』ちゃんと歌えますかね」と不安になりながらも提案すると、天童さんは「チャレンジするいい機会だと思うので、頑張ってやりましょう」と、受け入れてくれます。大御所なのに、謙虚で前向きな姿勢に勇気づけられます。山内君は3人の中で一番年下で、こういう曲を歌ってみたいというフレッシュなアイデアをたくさん持っていて頼もしいし、やっぱりこれからの演歌界を背負っていく1人なんだなと感じました。お2人とも毎日当たり前のようにたくさん歌っていて、鍛え方が違うというのかな。やっぱり、違うジャンルの人と新しいことに挑むのは面白いですね。

橋爪功さんがつくる世界に入れる喜び

9月16~19日に公演がある「リーディングプロジェクト」も異ジャンルではないけど、それに近い感じのチャレンジです。橋爪功さんとは2017年に『謎の変奏曲』という2人芝居の舞台でご一緒しました。それ以来、ヅメさんと呼んで、家族ぐるみで仲良くさせていただいています。「また一緒に何かやりたいですね」と話していたところ、今回、自ら演出される朗読劇の第1回の公演に声をかけていただき、喜んでお受けしました。

『謎の変奏曲』でヅメさんと一緒にお芝居したときは、本当にすごい俳優さんだと感じました。ただ、何がどうすごいのか計り知れないところがあったので、それをもっと知りたいという思いがずっとあります。その後、主演された映画『家族はつらいよ』のシリーズなども見て、こんなに人を引きつけるお芝居って、どうしたらできるのだろうと考えながら今に至っています。特別なことをしているわけではないのですが、何もしゃべっていないときでも、その役がずっと生きているというのかな。お芝居を超えて、人として引きつけられるたたずまいなんです。その秘密を知りたいのですが、ヅメさんが稽古場で教えてくれるわけでもなく、見て盗むしかないので、今回はそのいい機会でもあります。

公演は二幕構成で、第一幕はヅメさんとタップダンサーのRON×Ⅱさんによる朗読劇『関節話法』。筒井康隆さんのSF短編を、ヅメさんの朗読とRON×Ⅱさんのタップダンスの音で表現するのでしょう。フィジカルなタップダンスと朗読劇の組み合わせは新鮮で、既存の朗読劇とはまた違った面白さがあると思うので興味深いです。

そして第二幕が、ヅメさんと僕による朗読劇『船を待つ』。ヅメさんが昨年出演した三國月々子さん原作のNHK-FMラジオドラマを再構築するものです。初老と青年の男性2人の話で、ラジオではヅメさんが初老の男性、渡辺いっけいさんが青年の役をやられました。今回は、ヅメさんが青年、僕が初老の男性を演じます。ヅメさんなりの考えがある配役でしょうけど、僕にはプレッシャーでもあります。劇場の下見にご一緒した際、「セットはないけど、ちょっと印象的なものを置こうか」とか「こういう照明にしよう」とか、いろんなアイデアをお持ちでした。僕は「いいですね」とうなずいていただけですが、そうやってヅメさんがつくる世界の中に入れるのは、とてもうれしいことでした。

朗読劇は、これまで何回かやらせてもらいましたが、立って動きながらお芝居するのとは全然違うジャンルの演劇だと思います。そんなに動きがあるわけではなく、お客さまは想像力を駆使して見てくださることになるので、セリフのちょっとしたニュアンスや間や音量によって、どんどん世界が広がっていきます。今回は読売日本交響楽団在籍のチェリスト、渡部玄一さんに生演奏をしていただけるので、そのチェロの音色もすごく想像をかき立てるでしょう。ヅメさんがどういうセンスで演出されるのか、わくわくしています。

短い期間ではありますが、天童さんや山内君と一緒に歌えたり、ヅメさんやRON×Ⅱさん、渡部さんとコラボできるのは、すごく魅力的なこと。やってみたいという気持ちにあらがえません。そこに至るまでには大変なこともあるだろうし、苦労もして後悔するかもしれないけど、それ以上に学ぶことが大きいのが分かります。そういう経験の積み重ねが、ほかの舞台や表現にも生きてくるだろうし、自分の大切な糧になりそうです。

『夢をかける』 井上芳雄・著
 ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に2020年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(日経BP/2970円・税込み)
井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)、『夢をかける』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。9月17日(土)は休載、第123回は10月1日(土)の予定です。

夢をかける

著者 : 井上芳雄
出版 : 日経BP
価格 : 2,970 円(税込み)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_