一方、洗口剤はどうかというと、「洗口剤を口に含み、30秒以上ぶくぶくうがいをすると、食器洗浄機のように強く細かい水流で口の中の隅々、歯ブラシの毛先が到達しにくいところにまで成分を行き渡らせることができます。つまり、起床時の洗口剤うがいにより、寝ている間に口の中で大量に増えた歯周病菌を一気に減らせるほか、就寝前に洗口剤うがいをすることで、就寝中の歯周病菌の増殖を抑えることができるのです」と松下さんは説明します。
「洗口剤が実際にどのような効果を示すかを実験したところ、殺菌成分の塩化セチルピリジニウム(CPC)は、それで洗口剤うがいをした後そのままにしておくと5時間後にも虫歯菌、歯周病菌の増殖を抑えました」(松下さん)
CPC配合洗口剤使用後5時間、細菌数が抑えられた

また、洗口剤は菌血症の予防にもなります。「歯周病菌がたくさんいる状態で歯ブラシを使うと、もろくなった歯肉から毛細血管の中に、歯周病菌が侵入しやすくなります。歯磨きをする前に洗口剤で口をすすぐことで、あらかじめ歯周病菌の数を減らしておくことができ、血管への侵入リスクを下げることにもつながります」(松下さん)
・起床後 …就寝中に口内で増えた歯周病菌を一気に減らせる
・就寝前 …就寝中の歯周病菌の増殖を抑える
・歯磨き前…歯磨き時の出血をきっかけにした菌血症の予防
洗口剤は、外出時に歯磨きができないときの代用や、口をすっきりさせるためのケア製品と思っている人も多いでしょう。確かにそうした目的で用いてもいいのですが、歯周病や菌血症予防の重要なツールにもなることを覚えておきましょう。
ただし、その効果を発揮させるには正しく使うことが重要です。「先ほど説明した有効性のテストの結果の通り、30秒以上すすぐと殺菌効果が高められることがわかっています。逆に、30秒以内で吐き出すとあまり菌が減りません。特に就寝前には、洗口剤で口をすすいだら、なるべく水ですすがず、その成分を口の中にとどめるようにしましょう。朝起きたときに口の中のネバネバ感が全然違うことに気づくはずです」(松下さん)
・口に含んだ後、「30秒以上」すすぐ
・洗口剤ですすいだ後は「水ですすがない」
(図版作成=増田真一)
[日経Gooday2022年8月15日付記事を再構成]