「それ、会わなくてもできるよね」の中にイノベーションの種

緒方 今回の対談もオンラインです。社内コミュニケーションはどうしていますか。

田川 僕らもオンラインがメインになっているんですが、ミーティングの課題意識が高まっていて、方法やツールの使い方について真剣に議論しているところです。

情報共有の方法についても、以前は資料一辺倒だったんですが、最近はいろいろ組み合わせています。例えば、ミーティングの前に、担当者が「1人Zoom」で画面共有機能を使ってプレゼン資料を使いながら説明した数分の動画を作って、共有しておくんです。参加者は、事前にこの動画を見たうえでミーティングに参加するので、集まったときには情報共有のプロセスを飛ばしてすぐに議論に入れます。

今までみんなで集まって行っていたことを精査し、できるだけ非同期化して、集まったときには、集まらないとできないクリエーティブな作業に集中できるよう工夫しています。

コロナ禍では、「会う」ことのコストが高くなるので、「リアルで集まってやること」の見直しが進んでいますね。

緒方 そうですよね。会うにはそれなりの理由が要るようになっていますから。

田川 「それ、会わなくてもできるよね」ということの中に、いろんなテクノロジーやイノベーションの種が潜んでいるような気がするんですよ。

テキスト、音声、動画、といったメディアの選択に加えて、同期なのか非同期なのか、といった選択の「組み合わせ」が重要になってくる。その組み合わせがちょっとズレるだけで、効率やアウトプットの質が下がってしまったりします。

今って、こうした可能性の探索が日々起こっている珍しい時期だと思います。

緒方 生活の中で、いろんな断捨離や再構築が進むんでしょうね。「あれ? 今までこうしていたけど、そうじゃなくてもよくない?」と、ゼロから再認識させられることも多い。

音声と「デザイン」の関わり

緒方 今後は、「音声のユーザーエクスペリエンス」を、もっと考える必要が出てくるように思います。

田川さんは「デザインの世界の人」ですが、デザイナーは「音声」に、どう関わっているんでしょうか。「デザイン」ってどうしても視覚的なもの、空間的なものというイメージがあるので。

田川 実はサウンドデザインの仕事って多いんですよ。タクラムにはサウンドデザイナーもいます。

おっしゃる通り、音声のユーザーエクスペリエンスでは考えるべきテーマがたくさんあります。例えば、スマホのアプリの多くは画面で操作していますが、スマートスピーカーのように音声でやりとりするデバイスも増えています。その場合、すべての操作に声で返すのではなく、効果音と組み合わせる方がいいこともある。また、そうした「音のデザイン」に、ブランドパーソナリティーをどのように設定するかという議論も出てきます。

ジェンダーの問題も避けて通れません。音声アシスタントのジェンダーをどう設定するのか。「アシスタント」という、人から指示されて何かをするといった役割のものに、固定のジェンダーを割り付けてしまうことへの倫理的な問題というのは、デザインの世界では非常に大きなテーマです。ジェンダーレスな音声ファイルというのもあって、よく使われています。

次のページ
まだ「絵の具」が足りない
ビジネス書などの書評を紹介