お次は『ソウル・オブ・ワイン』。ロマネ・コンティをはじめ世界最高峰と言われるワインの数々を生み出すフランス・ブルゴーニュ地方のブドウ畑やワイナリーにカメラを入れ、素晴らしいワインはいかに生まれるのかを探ったドキュメンタリー映画だ。

世界の頂点に立つワインの造り手ばかり
セリフが少なく、その分、畑やワイナリーで黙々と作業をする人々の映像が脳裏に焼き付く。フランスからオンラインでインタビューに応じたマリー・アンジュ・ゴルバネフスキー監督は、「私は印象派の監督なので、頭で理解するのではなく、映像を見て心で感じ取る作品づくりが信条」と説明する。
作品に登場するのは、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティやドメーヌ・デ・コント・ラフォンなどまさに世界の頂点に立つ造り手ばかり。いずれの生産者も長年、農薬も化学肥料も使わない有機農法や、有機農法以上に自然との調和を重視するビオディナミ農法でブドウを栽培している点が共通している。
ゴルバネフスキー監督は「ワインは造るものではなく自然の中から生まれてくるもの。だから自然を敬い、自然の声を聞きながら仕事をする職人たちの姿を撮りたかった」と話す。
※11月4日よりヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー。

『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』は、中東・レバノンでワイン造りにかかわる人々にインタビューし、戦争の不条理さや人間のたくましさを描いた社会派ドキュメンタリー作品に仕上がっている。完成に約7年を費やした労作でもある。
レバノンは数千年におよぶ長いワイン造りの歴史を持ち、今でも生産量は少ないながらも高品質のワイン造りで知られる。しかし、長引く内戦やイスラエルとの戦争で国土は荒廃し、ワイン産業も大きな打撃を受けた。作品にはワイナリーの敷地内に爆弾が落ちてもなおワインを造り続ける兄弟や、11歳で父親から銃の扱い方を教わり、その父の遺志を継いでワイナリーを経営する女性などが登場し、死と隣り合わせのワイン造りについて生々しく語る姿が印象に残る。
日本にも輸入されているシャトー・ミュザールの2代目オーナーで、英国の有力ワイン雑誌デキャンタが1984年に創設した「マン・オブ・ザ・イヤー」賞の初代受賞者に輝いたセルジュ・ホシャールさん(2014年末に他界)は、作品の中でこう語っている。「ワインは実に偉大な師だ。人々の心を通わせるのだからね。心が通えば平和になる。戦争はしない」
※11月18日よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー