糖尿病発症リスクは1.4倍、重症度が高かった人ほど上昇
同時期の対照群と比較すると、新型コロナウイルスに感染した人たちの、陽性判定から30日後以降12カ月後までの糖尿病発症リスクは1.4倍で、有意に上昇していました。1000人あたりにすると、糖尿病発症者は同時期の対照群より13.46人多くなっていました。同様に、30日以上の血糖降下薬使用のリスクは1.85倍、糖尿病発症と30日以上の血糖降下薬使用のいずれかまたは両方のリスクは1.46倍でした。
対象者を、年齢(65歳以下と65歳超)、人種、性別、BMI(18.5以上25以下〔普通体重〕、25超30以下〔過体重〕、30超〔肥満〕※米国の基準に基づく)、居住地域の社会経済的レベルに基づいて分け、同様に分析しましたが、やはり新型コロナウイルス感染症後の患者において、3つのリスクが上昇していることが示唆されました。
コロナ感染時の重症度が高かった人ほど、それぞれのリスクの上昇は大きくなっていました(表1)。入院が不要だった患者(16万2096人)に比べ、入院した患者(1万5078人)やICUに入院した患者(4106人)の方が、3つのリスクのいずれも高いことが示されました。
表1 新型コロナウイルス感染症経験者の糖尿病リスク(重症度別、同時期対照群との比較)

過去の対照群を対象として、以上の分析を同様に行いましたが、いずれについても結果は同様でした。
新型コロナウイルス感染症後に糖尿病を発症しやすい危険因子は、もともと糖尿病リスクが高かった人、65歳超の高齢者、心血管疾患、高血圧、脂質異常症のある人、そして糖尿病予備群の人でした。
[日経Gooday2022年8月8日付記事を再構成]
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
