2021/10/5

本当の得意分野で勝負する

人生を切り開いていくために、もっとも大事なことは「本当の得意分野で勝負すること」だと私は考えます。

人間は、つい「あれも、これも」といろんなところに手を出したくなるものです。その道で活躍している人を見れば「自分もあんなふうになりたい」と思いますし、ちょっと視野が広がってくると、あらゆる分野で評価されたいと思うようになってきます。

そもそも人生は「失敗」と「回り道」の連続ですから、いろんなことをやってみるのはいいと思います。特に若いうちは「自分の得意分野はここ」「だから、それ以外はやらない」と決めつけず、さまざまな経験を積み、失敗をして、傷つくことも必要です。

ただし、ある程度のキャリアを積んだら、「本当の得意分野」で勝負をすることが大切です。

要するに「絞り、捨てる」ということです。

私も医師としてテレビやラジオに出演することが増えてくると、ときとして政治や経済のコメントを求められることがあります。そんなとき、以前なら「政治や経済のコメントもできるよう、その方面もがんばろう」と思っていましたが、あるときからスッパリやめました。

「そんなことをするくらいなら、もっと自分の得意分野に特化していこう」。そうはっきりと思い直したのです。まさに「絞り、捨てた」のです。

そう思えた瞬間から、私は本当の意味でのストレスフリーになりましたし、自分の専門・得意分野でのクオリティは確実に上がりました。人生を切り開いている人というのは、結局のところ「自分の得意分野にこだわって生きている人」なのです。

※書籍の『整える習慣』(日経ビジネス人文庫)では、「身の回りの整え方」「時間の整え方」など8つの章で整え方を紹介しています。「自分らしさの整え方」の章は、ほかにも〈「八方美人」がストレスにならないなら、どんどんやればいい><「今が一番若い」と意識する>など、7つの自分らしさの整え方を紹介しています。

小林弘幸
 順天堂大学医学部教授。1960年埼玉県生まれ。順天堂大学大学院医学研究科修了後、ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。自律神経研究の第一人者としてプロスポーツ選手、アスリート、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に携わる。

整える習慣 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 小林 弘幸
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 880 円(税込み)