2021年のSNS新機能 短尺動画や音声、収益化も多様に
2021年の主要SNS(交流サイト)を振り返ると、新機能導入の動きが活発だった。他社のある機能が人気となれば自社にも取り入れるなど、競争が激化している。そのなかからエンタテインメントに関わる機能を整理してみた。[日経エンタテインメント! 2021年10月号の記事を再構成]
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これまでリリースされた新機能を振り返ると、主要SNSが注力しているポイントが見えてくる。それは再生時間が数秒から1分程度と短い「短尺動画」「音声」、そして投げ銭などによる「収益化」だ。
短尺動画に関しては、TikTokの成功が大きかった。アプリ市場分析の米アップアニーのデータなどによると、TikTokは世界のSNSダウンロード数で1位。日本でもLINE、Instagramに次いで3位となっている。
短尺動画に注目が集まるなか、YouTubeが7月から短尺動画「YouTubeショート」をリリースした。縦型の動画で、最長時間は60秒だ。スマホアプリにも短尺動画専用タブを設置し、アプリから動画を作成することもできる。YouTubeにある曲をショートのBGMに使うことができるなど、YouTubeとの連携の強さが魅力。グローバルでの再生回数は、7月時点で1日あたり65億回以上となった。
Instagramは4月、短尺動画機能「リール」で活用できる機能「リミックス」を始めた。20年8月に発表された「リール」は、縦画面にかわいらしい特殊効果を施せる機能がTikTokに類似していると話題になった。「リミックス」は、他の人が作った好きな「リール」と自分の動画を一緒に再生できる。ダンサーがアップした短尺動画に、フォロワーが自分の動画をあわせて投稿するといったケースが増えており、新作のプロモーションに使うなどの可能性も考えられる。
音声チャット機能では、1月に大ブームとなった「Clubhouse」を思い浮かべる人も多いだろう。その熱狂冷めやらぬうちに、Twitterが「スペース」を発表、5月に正式リリースした。アカウントをフォローしている人に向けて配信できるので、多くのフォロワーを持つ芸能系の公式アカウントにとっても使いやすい。
Facebookも音声機能「Live Audio Rooms」を6月に米国で開始。Facebookをビジネスで利用する人が多い日本ではファンとの交流にも使われそうだ。
利用者の収益化も進む
新機能で新たな動きが見られたのがクリエーターズエコノミー、利用者が収益をあげられる仕組み作りだ。
Twitterはチップ制機能「チップ」をスタートし、お気に入りのアカウントを投げ銭で応援できるようになった。さらに、月額課金「スーパーフォロー」と音声機能スペースの有料版「チケット制スペース」を始めた。
チケット制スペースは、1ドルから999ドルまでのチケットを設定できる。招待人数もホストが決められるので、人数を制限した高額の限定イベントなども考えられるだろう。
FacebookはLive Audio Roomsなどで利用できる投げ銭機能「スター」をリリースした。
Instagramは条件を満たしたユーザーがライブ配信で収益が得られる投げ銭機能「バッジ」をスタート。クリエーターがショッピング機能で紹介した商品に対して収益が得られるアフィリエイト機能も米国でテスト中だ。
TikTokはライブ配信「TikTok LIVE」でクリエーターが投げ銭を受けられる「TikTok LIVE Gifting」を3月に、チケット制の「TikTok Gated LIVE」を8月に始めた。
YouTubeは、YouTubeショートでの収益化にも乗り出す。8月に始めた「YouTubeショートファンド」は、条件に合うクリエーターに100ドルから1万ドルの範囲のボーナスが分配される。
スマホで撮影できる短尺動画と音声での交流という、誰でも気軽に発信できる機能が充実する一方で、配信者が収益を得られる仕組みも整う。SNSは、その役割が交流から配信へと拡大される転換期を迎えている。
(ライター 鈴木朋子)
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