手打麺祭 かめ囲の「手打中華蕎麦(塩)」。麺のクオリティーの高さが確信できるはず

 ★手打麺祭かめ囲(東京・調布)

~生地から紡ぎ出す極太自家製麺は、職人魂の結晶。究極の麺を堪能あれ~

最後にご紹介するのは、東京・調布市内にある『手打麺祭かめ囲』。6月にオープンした新店の中でもラーメン好きからの注目度がひときわ高い大型ルーキーだ。同店の店主、亀井康太氏は高校生だった頃から、地元神奈川県の小田原市から月に1度は上京し、都内のラーメンを食べ歩いていた大のラーメン好き。食べ歩きの最中、『煮干しつけ麺 宮元』(東京都大田区)の1杯に出逢い、約6年間同店で修業した後、満を持して『かめ囲』を開業した若手ラーメン職人のホープである。

店舗は、京王線・柴崎駅から徒歩3分程度の場所にある。東京の大動脈である甲州街道沿いに立地している点も、長期的に考えれば、安定的な営業を続けていく上で有利に働くことだろう。

甲州街道沿いに今年6月オープンした「手打麺祭 かめ囲」

現在、『かめ囲』が提供する麺メニューは、「手打中華蕎麦」の「醤油」と「塩」、「油そば」の「こってり鶏油」と「こっさり煮干し」の4種類。中でもお勧めは、「手打中華蕎麦」の「塩」だ。

注文が入る都度、提供する人数分の麺を生地から打ち始める。それが、同店最大の特徴。「私が打つ麺は、一般的な手打ちよりずっと多くの労力を割きます。出来上がりの麺の生地の層は、数百にまで及びます」。生地の層の厚みは、麺の弾力性やコシの強さに直結する。手打ち麺にとってクリティカルな要素だ。

完成した「手打中華蕎麦(塩)」は、ビジュアルを見ただけで即座に、麺のクオリティーが超絶的に高いことが確信できる、こん身の仕上がり。

極太自家製麺は、うどん粉『麺祭』を主役に、中力粉、薄力粉など、数種類の小麦粉をブレンドし、歯を押し返すようなモッチリとした麺肌の触感が、食べ手の快楽中枢を心地良く刺激する。亀井店主にしか作ることができない「作品」だろう。

スープもまた、持てる技術の限りを尽くしている。神奈川県産「湘南どり」、鹿児島県産「黒さつま鶏」、鴨などの鳥系素材をメインに、絶妙なバランス感覚で魚介素材を合わせ、素材感の塊といえる。タレの味わいに工夫を凝らすことで、上質なうま味が、食べ手の口内で長時間にわたり持続するよう調整されている点も、特筆に値する。

申し上げるまでもなく、スープと麺の相性は極上のひと言。麺→スープ→麺→スープと、交互に食べ進めていくうちに、いつの間にか丼が空っぽになっていた。店主ご夫婦が、二人三脚で切り盛りする同店。ラーメンへの造詣は、亀井店主のみならず奥様も深い。店主の知恵と奥様の知恵が相乗効果を発揮し、数年後には都内を代表する実力店にまで成長を遂げているに違いない。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。