東京・錦糸町にオープンした「錦糸町中華そば さん式」

 ★錦糸町中華そば さん式(東京・錦糸町)

~伝統と革新の両立。店主の研さんの足跡が肌身で感じられる良杯~

続いてご紹介するのは『錦糸町中華そば さん式(しょく)』。同店を切り盛りする谷地文明店主は『麺屋 ねむ瑠』(東京都文京区)で、店長を任せられていた方だ。『ねむ瑠』は、これまでラーメンのスープに用いられることがほとんどなかった「烏賊(イカ)」を主役とする1杯を提供することで、オープン後、歳月を待たずしてブレイクした。都内を活動フィールドとするラーメン好きなら、知らない者はいないほどのビッグネームだ。

『さん式』は東京メトロ半蔵門線・錦糸町駅から徒歩5分程度の場所にある。錦糸町のランドマークである複合商業施設『オリナス錦糸町』にも近く、ショッピングのついでにラーメンを楽しむといったシチュエーションでも大活躍しそう。

さん式の「中華そば」。懐かしさが感じられるオーソドックスな一杯だ

現在、同店が提供する麺メニューは「中華そば」「烏賊背脂煮干中華そば」と、そのバリエーション。券売機の筆頭を飾る「中華そば」は「懐かしさが感じられるオーソドックスな1杯」で、店主独自のギミックを随所に盛り込んでいる。

スープは、動物系(鶏・豚)、魚介(2種の煮干し・3種の節)、香味野菜等の素材を使用。「各種素材から抽出されるうま味のバランスをできる限り均等にするよう心掛けた」だけのことはあり、複数のうま味成分が仲むつまじく手を結ぶ会心の仕上がり。天空に向かって伸びる大樹のように雄々しく立ち上がるうま味の塊、香味野菜から染み出すナチュラルな甘みも過不足なく、実に好印象だ。

切り刃20番の名門『菅野製麺所』(東京都大田区)の中細ストレート麺も、サクリと歯切れのよい食感が、快楽中枢を優しく刺激し続ける。まさに「このスープにして、この麺あり」の逸材といえる。あまりにも快適な食べ心地に、気付けば、丼が空っぽになっていた。