「営業の例で言うと、お客様とのアポイントを今週は10件取るという目標に対して実際には8件しか取れなかったとします。浅い振り返りだと、『今週は2件足りなかった。来週は12件取って挽回できるように頑張る』とか『絶対10件取れるようにしっかりやる』という精神論・根性論で終わってしまいます。ところがこの本には、取れなかった2件のアポではなく、取れた8件のほうにスポットを当てなさいと書かれているのです」

できなかった部分をみて反省ばかりしていると精神的につらくなるため、かえって深く考えないクセがついてしまう、というのが著者の主張だ。振り返りで重要なのは、うわべの「反省」ではなく深い「内省」。できなかったことではなく、うまくできたことに目を向け、なぜできたのか、何がよかったのかをまず考える。そうしてポジティブな心理状態を作った上で、「果たして本当にできたと言えるのか」と問い直せば課題の本質に迫れるようになると説く。

深く考えるとはどういうことかを伝えるのに最適な本だという。

「この技術を使うと、単にアポが10件取れたかどうかではなく、10件という目標設定自体が適切だったのだろうか、とか、他にもっといいやり方があるのではないか、とぐるぐる頭が回り出します。すると次は別の目標を立ててこんな工夫をしてみようと新しいアイデアまで浮かぶようになります。ポイントは自己肯定感です。人間は自己肯定感があって初めて、もっとできるはずだという『成長欲求のスイッチ』が入るのです。もともと同じレベルの能力だったとしても、自己肯定感を上げながら次の仕事にチャレンジするかどうかで5年後、10年後の成長には大きな差が出てくる。それは私も日々実感しています」

口だけの「改善」から抜け出すための文章化

同書ではもう一つ、効果的な振り返りの手法を紹介している。それが文章化だ。自分がその仕事にどう関わり結果として何が起きたのかという「詳細な事実」と、結果が生じた「原因の分析」、見えてきた改善策について自分はどう感じているのかという「本音の感情」、さらに確実に実行できそうな「次なる行動」という4つの要素を盛り込むのがポイントだという。

多くの企業では管理目的の日報や週報が使われているが、著者によれば、それらは主体性を発揮させるツールとしては不適格。報告する相手が多くの場合、上司なので、どうしてもとりつくろう気持ちが出てしまい、内的な「成長欲求のスイッチ」が入りにくいからだという。それよりも週に15分、300~450字で4要素を網羅した文章を書くことを薦める。

「こういう技術を身につけ始めた新人はすごく変わりますよ。振り返りをする金曜日に『できたこと』を書くために、月曜から木曜の間にネタを集めようとするので、毎日深く考えるようになるのです。3カ月も経つとかなりしっかりしてきて、初めの頃は1人称の『頑張ります』みたいな決意表明だったA(Action=改善)も、チームメンバーや上司など他者を巻き込んで物事を動かしていこうという発想に切り替わります」

やさしい語り口で書かれているので、「読書が苦手な人でも読みやすい」と川島さん。新人の指導役からも、効果があると好評だ。

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大事なことは幼児期に習っている