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トップがきちんと把握しておくべきマネジメントの基本とは何か。目の前の問題解決で実績をあげ、社長に上り詰めたとき、ふと不安がよぎったり自信が持てなくなったりする瞬間が訪れるかもしれない。そんな瞬間はマネジメントの一角を担う役員昇格のときにも訪れる。社長の悩みに寄り添ってきた気鋭のコンサルタントが意思決定のよりどころになる経営書を紹介するシリーズの後半は、そんな新任役員に向けてお届けする。

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「今君が説明していることと、ここに書いてあることはどう関係しているの?」「結局、結論は何?」。昨晩まで部下を巻き込んで準備したはずの資料が社長に伝わらない。チクチク細かく話を詰められることが多いので、あらゆるパターンを想定して様々な情報も準備した。「何かに使えるかもしれないから、この情報も入れておこう」。そう思って集めた情報が裏目に出て「君の言っていることとこのデータは矛盾していないか?」とまた詰められてしまう。

誰かに分析結果を伝えることのトレーニングを、多くの日本の会社員は行っていない。これは基礎トレーニングのようなもので、キャリアの長さに関わらず全員が日々訓練をする必要がある。しかしながら自分の失敗を改善するための正しいフィードバックを得られることがなく、亜流のままで時間が過ぎてしまう。

この資料は誰に何を伝えたいのか?

まず基本的な考え方を理解したい人には、コール・ヌッスバウマー・ナフリック『Google流資料作成術』(村井瑞枝訳、日本実業出版社)をお勧めする。原題は、「Story Telling with data」であり、直訳すると、「データで物語を伝える」といったところだ。つまり、どうやってデータを説得力もって相手に伝えるかが主眼にある本だ。

本書の主張は至極シンプルでまっとうなものであり、まず「誰に話を伝えようとしているのかを考えよう」という点から始まる。この点は当たり前のようで忘れがちな点だ。本書の言葉を借りれば「自分が伝えようとしている相手のことを詳しく理解するほど、相手にうまく伝えられる確率は上がります」とのことだ。

相手が分かれば、相手に伝えるべき一番大事なメッセージを絞ることができる。裏を返せば、無駄な情報を排除することができる。そうすれば受け手も、絞られた情報に集中することができるので、理解しやすい。

例えばあなたが、「競合に対抗するために自社の製品価格を下げるべきだ」と主張したいとしよう。既に競合の製品の価格が下がっていることを知らない人と、知っている人に対して、同じ主張を通すのでは、説明の中身が違うはずだ。

日本の会社員の多くは誰かに分析結果を伝えるトレーニングを積んでいない(写真はイメージ=PIXTA)

日本の会社員の多くは誰かに分析結果を伝えるトレーニングを積んでいない(写真はイメージ=PIXTA)

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