以来、相手に関係なく意見をぶつけることを心がけた。実直に議論することで周囲の信頼を獲得。30代からは予算の査定や政策企画など、女性が少なかった職務にも就くようになった。

もっとも「言うだけ」ではだめということにも気づいた。予算の査定をし始めた頃は、事業部局側の予算の要求内容が曖昧だと、正論を振りかざし手厳しい態度をとっていた。だがあるとき、部局側の年長職員から「君は人の話をきちんと聞かない」と諭されてしまった。「とても反省した。その後は相手を尊重し、事業手法や目標を修正できないか話し合うようにした」

健康医療部長となった今も、その姿勢は変わらない。コロナ対策などについて部内で毎日議論するが、性別や職階にかかわらず、その課題に一番詳しい人に意見を聞くようにしている。大学院大学での研究も感染データの分析に役立った。

フラットに言うべきことを言って議論する風土が、職員の潜在能力を引き出すこともわかった。「今回のコロナ対応では、多くの職員が自らの判断で動いた。組織としてみんなの力がつながった」。そう確信する。

(聞き手は山下宗一郎)

[日本経済新聞朝刊2021年11月29日付]