「カニクリームコロッケ」(1760円)。ズワイガニをたっぷり使い、トマトソースを添えた人気メニュー

「銀座スイス」ではシュウマイも洋食

オムライスは今でも人気だが、現在のメニューに記された人気1位、2位は「カニクリームコロッケ」と「ビーフクロケット」。ビーフクロケットは、和牛のひき肉が入ったベシャメルソースを使ったコロッケで、取材中も客が次々とオーダー。取材が終わるころには売り切れた。思わず、次に店を訪れた際は、絶対にこれを食べようと心に決めたほどの人気ぶりだった。

「洋食はフランスやイタリア料理とは異なり、『日本食』です。カレーライスもオムライスもおコメを使った料理で日本人になじみやすい。だから、みなさんが飽きず、いくつになっても好きな料理なのでしょう。今は簡単に食べられる冷凍品などもおいしくなっているので、銀座にお店を構えお代をいただくからには、それ以上のものを提供しなければと常に思っています。きちんとした丁寧な仕事を守り続けいくと共に、新しい味、若い人に喜んでもらえるメニュー作りも心掛けています」(庄子さん)。

土産やつまみとして人気の「洋食屋のシュウマイ」。トッピングもグリーンピースではなく、ベーコンだ。イートインは3個入りで660円。テークアウトは3個(648円)から

そうした新しい名物料理の1つが、数年前に考案した「洋食屋のシュウマイ」だ。カレーの中にも入れている豚のひき肉を用いた1品。シイタケ、タケノコ、ネギなど中華の食材は一切使わず洋風に仕上げている。ベーコンを使い、タマネギは生と炒めたものの2種類を練り込む。生は食感、炒めたものは甘みを加えるためだ。つなぎはブイヨンで、白ワインで香りづけをする。肉のひき方を変えるなど何度も試作を重ねたそうだ。

そもそもは、何か土産になるものをと開発したメニューだが、「シュウマイの形をしているけど、食べるとシュウマイじゃない。洋食だ!」と客が驚くメニューで、来店するとまずこれをつまみにビールを1杯、という客が多いという。

4月から登場した新メニュー「タラのエスカベッシュ」(左手前、1200円)と「野菜のマリネと生ハムの盛り合わせ」(右奥、1000円)。それぞれスモールサイズもある

4月からは、肉厚のタラを使った「タラのエスカベッシュ」「野菜のマリネと生ハムの盛り合わせ」といった新メニューも登場。野菜たっぷりで、酒のつまみとしても楽しめそうな料理だ。藤岡さんも庄子さんも、「フランス料理などと異なり、洋食は家庭料理の延長のように思われてしまうことが多い」と言うが、料理人が腕を振るったおいしい洋食は格別。カツカレーをシメにして、至福のひと時を過ごしたい。

(ライター メレンダ千春)

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