最後にパリ支部の筆者からも一品。人気フレンチシェフのレシピをまねした「イカのカルボナーラ風」を紹介しよう。

①イカの胴体部分とエンペラ部分をそうめんをイメージしながらひたすら細かく切る②鍋にベーコン(脂ののった塊ベーコンを推奨)とニンニクを入れて、カリカリになるまでじっくり炒め、ベーコンのみキッチンペーパーの上に取り出しておく③鍋に残ったベーコン由来の脂を少量、イカにふりかけて軽くあえ、200度のオーブンに1分入れる④同じ鍋に生クリームを100ccくらい入れて煮立たせ、③で火を入れたイカの上にこのクリームを半分くらいふりかけて、あえる。皿にソースであえたイカを盛り付けたら、残りのクリームもここでかけ、ベーコン、卵黄をのせてお好みの粉チーズ、パセリ、黒コショウをふったら完成
少し火を入れた半レアなイカが、絶妙。ベーコンとニンニクの香りが移ったこの生クリームソースに、バゲットを浸して食べるのがまた最高である。お好みで、日本人らしくちょっとしょうゆを垂らして味変してみてもよい。白ワインを片手に、ボナペティ!(召し上がれ)
アートにも昇華されるイカ
例のごとく、もっとイカのことを知りたくなった筆者。水産庁のホームページを訪れると、インターネット百科事典wikipedia(ウィキペディア)ならぬ、「イカぺディア」なるものを発見した。作成しているのは、「日本いか連合」という団体だ。イカの魅力をより多くの人に広めたいという思いで2019年4月に発足し、幹部5人とイカ伝道師3人の計8人で現在は活動しているという。

日本いか連合の主な活動内容は、年に1、2度のイカパーティーの開催(20年、21年はオンライン開催)、同人誌『いか生活』の発刊、イカペディアの制作、イカソングの制作など。調べていくにつれ、並々ならぬイカへの愛情と情熱がぐいぐい伝わってくる。これは是非お話を聞きたいと、日本いか連合代表のいかいかよしかさんに、まずは水産庁コラボにいたった経緯をうかがった。
「コロナ禍でサンシャイン水族館が一般客の受け入れを停止している時期、研究や業務上の都合で水族館を訪れていた、いか連合メンバーと水産庁の担当者が、アオリイカ水槽の前で偶然出会いました。互いに『こんな時期にイカ水槽の前にいるなんてただ者じゃない!』と感じ、そこから意気投合。とんとん拍子で話が進みコラボすることになりました」(いかいかよしかさん)。
コロナ禍の運命の出会いからスタートした「イカペディア」プロジェクト。現在公開中の「イカ図鑑」などに加え、今後は「イカと釣り」や「イカと漁業」「イカと地域のかかわりについて」などのコンテンツも随時公開していくとのこと。

「イカは日本で食材として見られることが多いですが、食以外の切り口、例えば生物としての魅力やアート面における魅力からもイカの魅力を提案し、食以外の魅力に触れる機会を作っていきたいです」と語る、いかいかよしかさん。
例えば、いか連合幹部の1人、宮内裕賀さんは、イカと向き合いイカそのものの魅力をアートの形で表現する「イカ画家」だ。イカを素材にイカを描くユニークさと類まれな実力が高く評価され、数々の芸術賞を受賞している。絵画という形になっているものに触れることで、普段意識してこなかったイカのさまざまな魅力に気づくはずだ。

「イカは私の人生を豊かにしてくれる存在。かなわない」と断言する、いかいかよしかさん。その海底2万マイル級の深遠なイカ愛に、筆者は大いなる刺激を得た。制限の厳しかったコロナ禍で、国境を越えて、現実世界では出会うことのない人々との貴重なつながりを創出してくれた、イカ。そんなイカに感謝を忘れず、これからもずっとイカを愛し続けようと心に誓うのであった。
(パリ在住ライター ユイじょり)