
創業から長い歴史を持ち、世界中から一流メゾンと称されるラグジュアリーブランドには、長年愛され続けるアイコン的存在がある。そんな「一生アイコン」の、誕生から未来へ向かうストーリーをお届けする。
■GUCCI [Horse Bit]
グッチの[ホースビット]

1953年から続くファッションの模範は未来にも向かう靴。
「1953」は、グッチというラグジュアリーブランドにとって重要な数字だ。1921年、イタリアのフィレンツェに開店した当初は、革製品の店だった。創設者であるグッチオ・グッチは、乗馬の世界から想起したアイテムも手掛け、それらは当時の富裕層たちの目に留まり、そこから今に続くラグジュアリーブランドとしての進化が始まった。
そんなグッチの物語は、2021年に公開され一躍話題となった映画『HOUSE OF GUCCI』でも興味深く知ることができるが、馬具という強力なブランドアイデンティティーから誕生したのが「ホースビット」だ。馬具のくつわの形をモチーフにした金具は、最初鞄(かばん)のフラップモチーフに使われていたが、1953年に「ホースビット ローファー」として誕生し、サドルに代わり、ローファーの顔となった。
当初はブラック、ブラウンのカラーバリエーションにサドルステッチを施し、“ソフトで履きやすいメンズローファー”として人気を博した。その後、1980年には“ファッションデザインの模範”としてメトロポリタン美術館の永久所蔵コレクションに加えられたことも、この靴のデザインとしての完成度の高さを物語る。そんな模範的シューズゆえに、誕生から70年近くたった今でも、ファッションに傾倒する多くの人々の心をつかんで離さない。
「何にでも合う、さらに上品に見える。」――愛用するひとりは、ホースビットローファーの最大の魅力をこう語る。「アメカジ、アメトラの足元にも合わせられて、フレンチにも合う。堅いスーツのハズしにもなり、フォーマルなタキシードにも華を添えてくれる。いい意味でテイストを選ばないのに品がある、唯一無二な靴」。
その後、半世紀を経て近年クリエイティブ・ディレクターとなったアレッサンドロ・ミケーレは、新たなビジョンのもとに21世紀のラグジュアリーを再定義。折衷的であり、コンテンポラリーであり、ロマンチックでもある――そのマインドは、2022年新作のホースビット ローファーにもよく表れている。ホースビットに加えフリンジやグッチのもうひとつの象徴であるウェブストライプをあしらい、ヒールには“Palm Springs”のメタルアクセントを。往年のハリウッド俳優たちにインスパイアされたコレクションテーマ“GUCCI Love Parade”の心を踏襲し、古き良き伝統に回帰をしながら、同時に新時代への始まりの靴となった。

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