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斬新なアイデアの生み方 何をすればひらめくのか

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ナショナルジオグラフィック日本版

シャワーを浴びているときや愛犬との散歩中に、ずっと悩んでいた問題の解決策や妙案が浮かんだことはないだろうか。

実際、問題に四六時中取り組んだり、発想を必死に求めたりするよりも、あまり頭を使わずにできる日々の雑事をこなしているときのほうが、創造的なひらめきを得られやすいことが、ここ15年の研究でわかってきた。

「予期せぬときに斬新なアイデアが生まれると、人々はいつも驚きます。私たちの文化には、そのような成果は懸命に取り組んではじめて得られるものだ、という通念があるからです」とカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学の認知神経学者カリーナ・クリストフ氏は話す。

受動的な活動の最中に妙案が生まれるのはなぜか。そのとき脳では何が起きているのだろうか。現在、こうした謎が「解き明かされつつある」とクリストフ氏は言う。その鍵を握っているのが、「デフォルトモード・ネットワーク」(DMN)と呼ばれる一群の脳領域だ。

脳の十数カ所以上の領域を結ぶDMNは、集中力を必要とする仕事に取り組んでいるときよりも、「マインドワンダリング」(心がさまよっている状態)や受動的作業の際に活性化することが、研究で明らかにされている。ひとことでいえば、DMNは「人間が能動的に活動していないときの脳の状態」だと、認知神経科学者で米ペンシルベニア州立大学の創造認知神経科学研究室を率いるロジャー・ビーティー氏は説明する。

ただし、「重要なネットワークはDMNだけではありません。アイデアの修正、却下、実行には、ほかのネットワークも関わっています」とビーティー氏はくぎを刺す。最近の研究でわかってきたこと、脳が持つ可能性を最大限に発揮するにはどうすればよいのかを紹介しよう。

デフォルトモード・ネットワーク(DMN)とは

DMNは2001年に米セントルイス・ワシントン大学医科大学院の神経学者マーカス・レイクル氏らによって偶然、発見された。氏のチームは、注意力が求められる課題をこなす際に被験者の脳がどのように機能しているかを、陽電子放射断層撮影法(PET)を用いて調査していた。入手した画像を、脳が休息状態にあるときの画像と比較したところ、脳の特定の領域群では、能動的な課題よりも受動的な課題をこなすときのほうが活発に機能していた。これは思いがけない発見だった。

ビーティー氏はこれらの領域群を「初期状態」を意味する「デフォルト」モード・ネットワークと名付けた。DMNは「過去の経験や世界に関する知識を引き出すことによって、アイデア創出の初期段階にも関わっています」と氏は話している。

これまでの研究では、創造力を測る作業の成績と、DMNを構成する灰白質(神経細胞が集まる部分)の容積との間に相関関係があることも明らかになっている。つまり、創造性にはDMNのサイズが影響しているということだ。

ある研究では、認知的努力の違い(つまり能動的な作業かどうか)によって、DMNの活動や接続性が変わるのかを調べた。ボランティアの被験者たちに、認知的努力の要求度が高い作業(色に名前をつける)、低い作業(単語を読む)、認知的努力が不要な作業(休息)を代わる代わる繰り返してもらった。その結果、DMNは休息時に最も活発であり、認知的努力の要求度が高い作業よりも低い作業に取り組むときのほうが活発であることがわかった。この研究成果は2022年4月15日付で学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

この結果は、DMNは照明の調光スイッチのように、おそらく必要な認知的努力のレベルに応じて活動レベルを変化させられることを示唆している。

2022年1月1日付で学術誌「Molecular Psychiatry」に発表された論文では、DMNと創造的思考との関連性が示された。この研究は、覚醒下での脳外科手術を受ける患者を対象に行われた。こうした手術では、露出した皮質の表面のどこに言語機能をつかさどる部位があるかを特定できる。

患者は手術中、脳のDMNまたは別の領域に直接、電気刺激を与えられながら、身の回りのありふれた物(この実験では書類止めクリップ)について独自の用途を考案するよう求められた。これは、既知の情報から様々なアイデアを生み出す「拡散的思考」の能力を評価する方法だ。その結果、この課題をうまくやり遂げる能力は、DMNのノード間の結びつきの強さに左右されることが明らかになった。

「DMNは創造性の重要な源泉と考えられます。また、マインドワンダリングと関係があることは確実です」と、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学者ジョナサン・スクーラー氏は話す。実際、2022年2月15日付で学術誌「Human Brain Mapping」に掲載された論文では、ポジティブで建設的な空想(計画の立案、楽しい考え、希望に満ちた鮮明なイメージ、好奇心など)は、DMNの活動や創造性と関連性があることが明らかにされている。

さまよう心がもたらす効果

ビーティー氏によれば、本人の自覚とは関係なく、人間なら誰でも日常的にマインドワンダリングを経験しているが、それにも複数の種類がある。自分の思考をある程度制御したり方向づけをしたりしようとする「意図的マインドワンダリング」と、本人が意図せずとも脳内で起きる「非意図的マインドワンダリング」だ。2021年1月に学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された論文では、脳波測定によって人間の脳活動を記録したところ、非意図的マインドワンダリングが起きている時間が全体の47%に及ぶことがわかった。

とりわけ、情報とアイデアの新たな組み合わせが生まれるのは、非意図的マインドワンダリングのほうだ。「心が問題から離れて空想の世界をさまよっているときこそ、創造的な思考が生まれるのです」とスクーラー氏は言う。「もちろん、時には問題と対峙しなければならないこともありますが、それが自然にアイデアが生まれる土台となるのです」

この過程は、しばしば「インキュベーション(ふ化)効果」と呼ばれる。課題や困難から離れた時間を過ごすことで、心はさまよいながら無意識の連想プロセスを経て新しいアイデアを生む機会が得られる。

スクーラー氏らは、人々がいつ斬新なアイデアを得ているのかを調べるため、プロの作家や物理学者に2週間の日記を書くよう依頼した。日記には、それぞれの日に思いついた最も創造的なアイデアと、そのアイデアが浮かんだときにしていたこと、そのときに「アハ体験」(「そうか!」とひらめく瞬間)を感じたかどうかを記録してもらった。

その結果、最も重要なアイデアの約20%は、本人が仕事以外の活動をしているときや、そのアイデアとは無関係な考えにふけっているときに生まれていた。この研究結果は、2019年に学術誌「Psychological Science」に発表された。さらに重要な点は、マインドワンダリングで生まれたアイデアは、行き詰まった難題の解決に結びついたり「アハ体験」を伴ったりする割合が高かったことだ。

創造性を高めるには

自己認識を深めるだけでなく、創造プロセスのこうした側面を理解すれば、自分の脳が持つ可能性を様々な状況で最大限に発揮できるようになるかもしれない。

米ドレクセル大学の創造性研究室を率いる認知神経科学者のジョン・クニオス氏は、まず良質の睡眠を十分にとることが最優先だと話す。そうすれば、気持ちが明るくなり、記憶の助けにもなるという。睡眠中は「昼間に得た情報が、壊れやすい状態からアハ体験をもたらしうる強固な状態に変化します」と氏は説明する。

一晩ぐっすり眠った後だけでなく20分ほどの仮眠をとった場合でも、目覚めた直後には、眠りと完全な覚醒の間のわずかな時間に生まれる思考やアイデアに注意を向けるよう、クリストフ氏は勧めている。この時間はアイデアが「のびのびと駆け巡ることが多い」ので、潜在的な創造性を引き出せるのだという。

日中にDMNと創造的なアイデアを意識的に活性化するには、散歩や温浴、ガーデニングといった、認知的な努力をあまり必要としない活動を行うことだ。ただし、その際は音楽やポッドキャストは聴かずに、心がさまようままに任せよう。クニオス氏は、とりとめのない考えに浸るのは「心理的安全性が確保された状態、つまり奇抜な考えが浮かんでも危険でなく、すぐに片付けるべき課題がない状況にあるとき」にするよう勧めている(つまり、運転中にはお勧めできない)。

日中なら、ある程度の動作を伴う簡単で慣れ親しんだ作業をすることで、自発的な思考の流れが促されるだろう。例えば、シャワーを浴びているときは「なすべきことも多くなく、視界も限られ、ホワイトノイズに包まれています」とクニオス氏は言う。「このとき脳は、普段よりも雑然としたやり方で思考します。管理のプロセスは消え、連想のプロセスが活性化するのです。いくつものアイデアが跳ね回り、様々な思考が衝突したりつながったりします」

自然の中で過ごす時間が、畏敬の念とともにくつろぎをもたらし、マインドワンダリングにつながることは、複数の論文で示唆されている。「これは、自然空間いっぱいに関心が広がるからです」とクニオス氏は解説する。「自然の中で散歩すれば気分が改善し、かけ離れたアイデアや遠い昔の思い出にも思考が広がります」

新しいアイデアが欲しいときや問題を解決したいときには、まずは一生懸命に課題に取り組み、行き詰まったら休憩して散歩に出るといい。「そうすれば、意識して取り組んでいた仕事に、心が無意識のうちに対処できるのです」とクリストフ氏は言う。

重要なのは、「普段なら後ろめたく感じる別の思考モードに入れるように」十分な時間をかけて、こうした活動を行うことだとクリストフ氏は説明する。「生産的にならないように、ゴールを追い求めないようにするには、心を十分にリラックスさせる必要があります。習慣として日常的に行っている活動では、心をさまよわせても罪悪感をありません。こうしたときこそ、心が新境地を開拓することができるのです」

だから、思い切って仕事を離れ、定期的にマインドワンダリングや物思いにふける時間を作ろう。「このマルチメディア社会の弊害のひとつは、個人的な空想にひたる十分な時間がないことです」とスクーラー氏は指摘する。心にさまよう機会を与えることは、自分の創造性への投資であり、有意義な時間の過ごし方でもあるのだ。

(文 STACEY COLINO、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年8月16日付]

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