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「サケ中骨缶」は高校生が生みの親 夢とうまさ詰め

黒川博士の百聞は一缶にしかず(8)

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NIKKEI STYLE

缶詰の定番商品の一つに「サケ中骨缶」がある。サケの中骨(背骨)だけを詰めて塩水で煮たもので、ほろほろ崩れる食感が小気味よく、脂っこいうまみもあってまことにおいしい。サバ缶やツナ缶ほどメジャーな存在じゃないけれど、10社以上のメーカーが製造販売しているから、根強い人気があるのが分かる。

そのサケ中骨缶が、実は高校の実習で生まれたことをご存じだろうか? 

それは1986年(昭和61)のこと。岩手県立宮古水産高校(宮古市)の先生と生徒たちが、調理実習で廃棄されるサケの中骨に着目した。魚の命をいただくのだから、なるべく余すことなく使いたいという思いがまず、あった。それに、日本人のカルシウム不足が話題になったころでもあった。

そこで、固い骨も「柔らかくなる」と、世界で初めてサケの中骨だけを集めた缶詰を開発したのだ。それが地元、宮古漁業協同組合(同)で商品化されることになり、さらに缶詰メーカーの目にもとまり定番商品にまで育った。高校生発案の缶詰は侮れない存在なのだ。

缶詰製造は宮古水産高校だけでなく、各地の高校で行われている。こうした缶詰は一般に流通することはほとんどなく、主に学園祭などで販売されている。地元の人たちにとっては毎年の楽しみにもなっており、どの高校でも売り切れになるほどだ。

そして、今年10月には地域の魚介類"ローカルフィッシュ"を活用した高校生缶詰の選手権「LOCAL FISH CAN グランプリ」(ローカルフィッシュ缶グランプリ、一般社団法人 全国道文化交流機構主催、日本財団 海と日本プロジェクト共催)の全国大会が初めて東京都内で開催された。63チームが応募した、いわば缶詰の甲子園のようなもので、未利用魚を活用したり、特産の養殖魚をアピールしたりと、社会的な意義を持つ缶詰が勢揃いした祭典だった。実は僕もその審査員を拝命しております。

味付けも缶のデザインも「ブラック」

LOCAL FISH CANグランプリで最優秀賞に輝いたのは、富山県立滑川(なめりかわ)高校(滑川市)の「富山越中いわし ブラックらーめん味」だった。富山はホタルイカの名産地だが、漁獲する際に同じ網にイワシ(マイワシ)も大量に入ってくる。イワシはホタルイカより安価で、地元に加工場がないこともあり、これまでは海に戻していた。しかし、イワシも立派な海洋資源。せっかく網に掛かったのなら「無駄なくおいしく食べるべきだ」と考案された1缶なのであります。

味付けを決めるために、12種類もの試作を重ね、最後に残ったのが富山名物「ブラックラーメン」味。おかげで、この缶詰が富山のものだと分かりやすいし、ブラックを基調にした缶のデザインにも説得力がある。

優秀賞を受賞したのは、大分県立海洋科学高校(臼杵市)の「Spicy BUDAI」(スパイシーブダイ)。大分県近海にはカジメと呼ばれる海藻が生い茂り、魚介類の産卵や成育の場(藻場)になっている。しかし、近年はカジメを食べるブダイが増え、生態系が変わりつつあるという。

ブダイは食用にもなるけれど、臭みがあるため、これまで捨てられていた。漁業者から見れば、役に立たない海の厄介者なのだ。そこで海洋科学高校の生徒たちの出番となり、缶詰化にトライした。

漁業者に協力してもらい、まずは漁獲後に血抜き(活け締め)をし、臭みを除去。さらにゴマ油やトウガラシでマスキングし、匂いがまったく気にならない缶詰に仕上げた。ちょっと中華風でピリ辛味だ。

同じ例では、兵庫県立香住高校(香美町)の生徒が、養殖のカキやアサリを食べ尽くすナルトビエイを使った「ナルトビエイのあんかけ」を造っている(特別賞受賞)。こちらも、海の厄介者を資源に変えた素晴らしい取り組みだった。

魚介類の缶詰を造るのは、なにも海辺の学校に限った話じゃない。"海なし県"である長野県の松本第一高校(松本市)は、同県で養殖されているブランド魚・信州サーモンを使って「信州サーモンの和風アヒージョ」を製造した。

なぜアヒージョという調理法を選んだのか聞いてみたら、驚くような答えが返ってきた。いわく、身肉が繊細なので、加熱するなら低温の油でじっくり火を通した方が柔らかさを保てる。だから油で煮る調理法、アヒージョにした、というのだ。プロの料理人のような発想であります。

地元産のブナシメジとマッシュルームを入れ、長野らしさをアピールし、ダシを加えることで、和の風味に仕上げている工夫もいい。

他にもクオリティーの高い缶詰が続々と登場していたが、その詳細や受賞結果などはLOCAL FISH CANグランプリの公式サイト(https://localfishcan.jp)を参照していただきたい。

地域発展にも貢献する高校生たち

僕が「高校生缶詰」に注目するようになったのは、愛媛県立宇和島水産高校(宇和島市)の水産食品科で、特別授業を行ったのがきっかけだった。

同科は、缶詰やレトルトパウチなどの食品を製造しながら、衛生管理や生鮮物流なども学ぶ学科だ。とはいえ、生徒全員が料理好きというわけではない。包丁を握ったことがない生徒や、菜箸を扱う手つきが怪しい生徒だってたくさんいる。

そんな彼らが、地元で獲れる魚介類や野菜を使って商品開発し、地域の発展に貢献しようと頑張っていたのだ。もちろん他の高校の生徒たちだって同様で、卒業後は食品会社に就職したり、さらなる勉強のために海洋系や食品系、調理系の学校へ進学したり。いずれも、日本のこれからの食を担う大事な人材なのであります。

今年は、福井県立若狭高校(小浜市)の生徒たちが造った「サバ醤油(しょうゆ)味付け缶詰」が宇宙に飛び立つというニュースもあった。自分たちが造ったサバ缶を「いつか宇宙食にしよう」と、何と13年もかけて、先輩から後輩へと受け継がれてきた一大プロジェクト。それがついに今年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙日本食に認証され、国際宇宙ステーション内で食べられたのだ。

高校生の造る缶詰には、実に夢がたくさん詰まっているのであります。チャンスがあったら、ぜひ一度、手にしてみてくださいな。

(缶詰博士 黒川勇人)

黒川勇人
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。

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