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フランスで焼きそばパン作り 炭水化物にまみれる快楽

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NIKKEI STYLE

ボンジュール! パリ在住ライターのユイじょりがお届けする「食の豆知識」。今回は、日本の総菜パン。なかでも、特にユニークな「パン」と「麺」の炭水化物コラボレーションサンド、「焼きそばパン」にスポットを当てたいと思う。

焼きそばパンといえば、学園を舞台にした漫画やアニメを思い出す。実際に学生時代、購買部で焼きそばパンを買い、安く早く手軽におなかを満たしていた読者の方も多いのではないか。

そんな青春の思い出の焼きそばパンを、今回なぜ深堀りするに至ったのか。きっかけは、フランス北部で遭遇した「ジャガイモ」が肝となるフランス版・炭水化物サンドであった。まずはそのエピソードに少しお付き合い頂きたい。

ジャガイモを使った炭水化物サンド

フランスのジャガイモ生産量は、日本の約4倍。肉や魚の付け合わせとして、まさに「主食のひとつ」と言えるほど、フランス人の胃袋を支えている。そんなジャガイモ、フランス国内の総生産量中、約3分の2がたったひとつの地域で生産されている。フランス北部、隣国ベルギーの国境に位置するHauts-de-France(オー・ド・フランス地域圏)である。面積でいえば、日本の関東地方より少し小さい。

この地域出身ゆえ、必然にしてジャガイモを愛してやまない我がフランス人夫。彼とともにパリと北部を行き来する道中、立ち寄るのが、ロードサイドや街中に点在する「フリットリー」と称されるフライドポテト店だ。店の総称は、フランスでフライドポテトのことを「フリット」と呼ぶことに由来するが、揚げたてのフリットとともにソーセージやサンドイッチなどを安価で提供してくれる、庶民にうれしいストリートフード店である。

ある日、夫が頼んだのが、揚げたてのフリットとフリカデルと呼ばれるこの地方独特のソーセージ。そしてどういうわけかバゲット(フランスパン)も半分、同時に購入していた。

「イモはやはり揚げたてに限るなあ」と、むしゃむしゃ食べること数分、夫がおもむろに動き出した。バゲットを取り出し半分に開き、その中にまず豪快にサムライソース(この地方で愛される辛いマヨネーズソース)を塗ると、このフリットをむぎゅむぎゅと詰め込み始めたのだ!

「フリカデルは小さめだし、ポテトはもっと山盛りにしたいんだけど」などと言いながらポテトを詰め込む夫。いわく、これは「アメリカン」という名のサンドイッチなのだという。私は見たことのない光景を目の当たりにし、とても驚いた。「パンに、ポテト?外側が炭水化物で、具も炭水化物。つまり主食on主食・・・?」

バゲットとパスタで作った焼きそばパン

そういえばこんな炭水化物サンド、日本にもあるではないか!と、このとき筆者の頭をよぎったのが、「焼きそばパン」である。無性に故郷が懐かしくなったので、日ごろの「なければ作ればいいのよ」精神発動、パリに戻って早速作ってみることにした。

しかし、時はコロナ渦真っ最中。外出制限もあるので家にあるものでなんとかしなくてはならない。苦渋の決断で、パンはフランスが世界に誇るバゲット。日本風ソース焼きそばに使う麺は、パリ在住の友人が「海外在住者の常識」だと言って教えてくれた裏技、「重曹パスタ」(パスタを茹(ゆ)でる際に重曹を入れたお湯で茹でるとパスタが中華麺のようになるという技)で代用することにしよう。当地では、日本に売られているような焼きそば用の麺が入手しにくいため、この技が大変役立っている。

ウスターソース、オイスターソース、しょうゆ、酒、みりん、はちみつを混ぜ合わせた特製ソースで焼きそばを作って半分に切ったバゲットにはさみ、上にマヨネーズ、青のり、べにしょうがなどをのせたら、なんちゃって焼きそばパンが完成した。

果たしてこの日本的炭水化物サンドは、仏人夫に受け入れられるのだろうか。「これが日本オリジナルのサンドイッチだ」と食卓に出してみた。夫は不思議そうな表情を見せ、焼きそばは箸で、パンはちぎって別々に食べていた……。

愛される焼きそばパン、そのルーツと進化形

日本における焼きそばパンの発祥を探ってみると、諸説ある中でも、東京都荒川区南千住にあった「野澤屋」が有力なようだ。残念ながらお店は2010年に閉店したそうだが、1950年代に焼きそばとコッペパンを販売していたところ、お客さんに「面倒だから挟んでほしい」と言われて売り出したのが焼きそばパン誕生のきっかけだったという。野澤屋の焼きそばパンは大ヒットし、その後東京中に一気に広まったといわれている 。

日本のパンメーカー最大手の山崎製パンからも、コッペパンに焼きそばを挟む定番タイプの「こだわりソースの焼きそばパン」が販売されている。また、同社が1984年から販売しているロングセラーブランド、具材を食パンで挟み四方をぴったりとくっつけた形が特徴の「ランチパック」。年間約4億個を生産する大人気ブランドだが、そのなかでも「パン×麺類」シリーズの商品を数多く展開している。

山崎製パンの広報担当者は言う。「特に今年4月に発売した日清食品の人気ブランド『日清焼そば U.F.O.』 とコラボした『ランチパック(ソース焼そば)日清焼そば U.F.O.監修』は、人気ブランドとのコラボということもあり、味わいの再現性の高さなど大変好評でした。また大学生との共同企画で2015年に地域限定発売した『ランチパック(釜玉うどん風)』も非常にユニークな具材ということで、驚かれた方も多かったです」

焼きそばに飽き足らず、なんとうどんも入れてしまったのか。ランチパックのWEBサイトをのぞいてみると、これまでに「スパゲティ」はもとより「ラーメン」や「焼きビーフン」など奇抜なものまで登場しており、見ているだけで面白い。サイトで筆者が調べた限り、今まで販売された麺類のランチパックは、少なくともなんと130種類以上!「パン×麺」はどこまで進化し続けるのだろうか。

炭水化物サンド、海外での反応はいかに

山崎製パンは海外にも事業を展開している。はたして日本の焼きそばパンは、海外でも販売されているのだろうか。同社広報担当者はこう語る。

「現在、焼きそばパンはベトナムのみ販売しています。ただ、購入されるのは日本人が中心で、現地の方には、パンと麺の組み合わせがなかなか受け入れられないようです。また、香港ではメンチカツを具材にしたパンは人気ですが、コロッケは他国も含めて今は販売していません。やはり、炭水化物と炭水化物の組み合わせはなかなか難しいようです」

そういえばコロッケも主原料はじゃがいも。これも炭水化物サンドの仲間ではないか! やはり、日本独特の「炭水化物on炭水化物」嗜好は海外目線ではなかなか珍しい嗜好なのではないだろうか。

なお、日本の総菜パンのなかでも「カレーパン」については、味などの違いがあるにしろ、どこの国でも一定の人気があるのだという。カレーはコメでもパンでもウエルカムということか。そういえば以前、カレーが余ったのでカレーパンを自作してみたのだが、最初は見た目でNGなそぶりを見せた仏人夫が一口食べて「おいしい!」と叫んで完食して以来、カレーの後の我が家の定番となっていることを思い出した。

炭水化物on炭水化物、日本人の食生活のそこらじゅうに!

ここまでみてくると、日本人の食生活において「炭水化物on炭水化物」は、パンに限らず身の回りに多く潜んでいることにも気づく。

例えば、「お好み焼きとコメ」。関西圏に縁がなく住んだこともない筆者としては「お好み焼きはがぜん、主食」と思っているのだが、、大阪に赴任経験がある東京育ちの当グルメクラブ編集長から、「ごはんとお好み焼きが同時に出てくる『お好み焼き定食』に最初は抵抗感があったが、帰任するころには当たり前のように注文していた。おなかもいっぱいになるしおいしいし、満足度は高い」と聞いた。

また、日本人にとって鉄板の組み合わせである「ギョーザとコメ」も、中国では見かけないらしい。日本に住む中国人の後輩にこの組み合わせについて聞いてみたところ、速攻でこう返信があった。「日本でギョーザとご飯を一緒に食べているのをみて驚きました! 中国では(小麦粉でできている)ギョーザもご飯も主食扱いですから、ギョーザをご飯と一緒には食べません!」と。

確かに言われてみればそのとおりだ。ラーメン店での「ラーメン・ギョーザ・半ライス定食」なんて、ダブルどころかトリプル炭水化物のとんでもない組み合わせではないか。

なぜ日本人は、こうも炭水化物on炭水化物を愛するのだろうか。これは筆者の推測の域を出ないが、本来日本食は「一汁三菜」「健康的」であるべきなかで、あえてタブーをおかしたくなるという人間のアンビバレントな感情によるものか。それとも、日本古来の文化・習慣に加えて海外由来のそれらを取り入れ、中和したりアレンジしたりして日本特有のものとしてきた日本人の思考の柔軟性によるものか。

とにもかくにも、異国での炭水化物サンドとの出会いをきっかけに、今まで気づかなかった日本人の摩訶(まか)不思議でユニークな嗜好を改めて見直すことができたのであった。

パリ在住ライター ユイじょり

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