横手さんは「LDLコレステロールが高い人がたくさんコレステロールをとれば、さらに上がる可能性があるので、とりすぎないほうがいい」と注意します。実際、「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」でも高LDLコレステロール血症の人はコレステロールの摂取量を1日200mg未満に抑えることを推奨しています。
動脈硬化の予防には、LDLコレステロールは低いほどいい
コレステロールは生命を維持するために必要不可欠な成分でもあるため、「数値が低すぎるのはよくない」「多少多くても問題ない」と思う人もいるようです。実際、ネット上の情報には、そういったことを示唆する情報もあります。
しかし、「これはよくある誤解で、LDLコレステロール値が上がれば動脈硬化のリスクは増えますし、下がれば動脈硬化のリスクは減ります。LDLコレステロールの量が問題になる病気は動脈硬化だけ。そして動脈硬化とLDLコレステロールの関係はいたってシンプルなんです。LDLコレステロールの値が低すぎると体に良くないというエビデンスもありません」と横手さんは言います。
LDLコレステロールが低すぎると死亡率が高くなるというデータはあるものの、それはがんや肝硬変などの患者が混じっているためだそうです。
「コレステロールはもともと体に必要なものですから、がんの人や衰弱してやせ細った人はLDLコレステロールが低くなっています。LDLコレステロールが低いから弱っているのではなく、弱っているからLDLコレステロールが低いわけです。つまり、因果関係の逆転ですね。少なくとも動脈硬化を防ぐためには、LDLコレステロールは低ければ低いほどいいと言えるでしょう」(横手さん)
ただし、気をつけなければいけないのは急に下がってきたとき。「薬を飲んでいるわけでもなく、食事も変えてもいないのに下がってきたという場合は、何か病気が隠れているのかもしれません」と横手さんは注意する。そんなときは早めに医療機関を受診しましょう。
[日経Gooday2022年6月13日付記事を再構成]