「社長は最低でも10年」 丸井グループ・青井社長

丸井グループの青井社長(右)と一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤氏

ESG(環境・社会・企業統治)重視の経営を追求する丸井グループの青井浩社長。2005年に社長に就任したが、07年に経営危機に陥り、カードと小売りの事業モデルを刷新した。現在は「利益と 幸せの調和」をテーマに顧客や株主、社員など6つのステークホルダー(利害関係者)の利益を重視する経営改革に取り組む。一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏が丸井の「ステークホルダー経営」に迫った。

伊藤 ESGは大切だが、余計な投資やコストがかかるとして前向きではない日本企業が少なくない。確かに自己資本利益率(ROE)とESGをインテグレーション(統合)するのは難しい。

ESG重視 きっかけは経営危機

青井 ESG経営を目指す直接のきっかけは07年から7年間続いた経営危機だった。なぜ危機に陥ったかというとお客様をはじめとしたステークホルダーのお役に立てなくなったからだ。バブル経済が崩壊する1991年まで丸井は30期連続で増収増益という金字塔を打ち立てた。とにかく売り上げや利益など数字ばかりを全社員で追いかけてしまった。本来はお客様や地域社会のお役に立つから利益が出ていたのにそれを見失った。

伊藤 利益は「御利益(ごりやく)」という。お客様や地域の皆に役立っているからこそ利益。バブル期にそれを忘れた日本企業は多い。

青井 15年前、社長になりたての頃は売上高とカードのことばかりを追いかけていたが、「まずお客様の声を聞きましょう」と社員に伝えた。「なぜこの会社に入ったのか」と社員に問うと「地域の人が好きだから」「お客様に喜ばれるとうれしい」と答える社員がたくさんいた。どんどん社員と対話を重ねるうちに、お客様や株主、お取引先様、そして地域社会など6つのステークホルダーに役立つ会社を作ろうというムードが出てきた。さらに地球の裏側では災害があったり、飢餓で苦しんでいる子供がいたりする。そんな時は「募金したりして助け合おう」「共感力が大切だ」という声が強まった。それでESG経営を考えるようになった。

伊藤 株主だけではなく、社員や地域社会などあらゆるステークホルダーの利益に配慮する「ステークホルダー資本主義」を実現するのは本当に大変だと思う。米ハーバード大学ロースクールのルシアン・ベブチャック教授は、そんなの幻想だといっているぐらい。様々なステークホルダーに目配りして経営するなんて「超絶技巧」だと指摘する人もいる。

次のページ
日本企業の社長任期は短すぎる
ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら