
甘くてとろりとした口当たりのデザートワインは、コース料理のデザートに合わせたり、デザート代わりに飲んだりすることから、そう呼ばれる。だが、意外と肉料理やチーズ料理とも合い、サイズが小さいボトルも多いためプレゼントにもいい。そんな使い勝手がいいデザートワインのおすすめをワインショップの担当者に聞いた。
デザートワインには様々な製法があり、それによって味わいや値段も変わってくる。代表的なデザートワインの1つは、貴腐ブドウから造る貴腐ワインだ。ブドウは成熟期に実の表面に貴腐菌が付着すると腐るが、一定の条件がそろうと枝についたまま干しブドウのような状態になり、貴腐ブドウとして貴腐ワインの原料となる。貴腐ブドウは水分が抜け糖分や酸、香りの成分が濃縮されているため、発酵させると濃厚な味わいの甘美なデザートワインになる。
ドイツやカナダなど寒冷な地方で造られるアイスワインも有名だ。氷点下の寒さで凍った状態のブドウから絞り出された濃縮果汁を発酵させてつくる、やはり濃厚な甘さがアイスワインの特徴だ。最近は収穫したブドウを人工的に凍らせて造るアイスワイン様のものもあるが、香りの凝縮感や複雑さでは自然から造るアイスワインにはかなわない。
収穫時期を大幅に遅らせてブドウを干しブドウに近い状態にして造るデザートワインや、イタリアのモスカート・ダスティのように発酵の早い段階で発酵を止めて造る比較的低アルコールのデザートワイン、ポルトガルのポートワインのようにリキュールを加えてアルコール度数を20%前後に高めたデザートワインなどもある。
上質のデザートワインは、一般に香りは非常に甘美だが、口に含むと甘さと一緒にレモンをかじった時のようなかんきつ系の酸味が口いっぱいに広がり、切れ味のよい甘さがいつまでも口の中に残る。貴腐ワインの場合は、かんきつ類の皮やアプリコット、ショウガ、蜂蜜など貴腐菌由来の複雑な香りも加わる。