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老舗菓子店が大変身 食べられる容器や美容サロン併設

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NIKKEI STYLE

あなたは日本の伝統菓子がお好きだろうか?

ここでいう「伝統菓子」とは、江戸時代前後からある大福やみたらし団子ではない。もう少し後ながら、登場から約半世紀以上たつ、国産メーカーが生んだ銘菓のことだ。一定の年齢以上の人たちのあいだでは、すっかり浸透しているが、その味を知らない若い層にもアピールすべく、SNS(交流サイト)や新商品を通じて新たな挑戦を続けている。今回はそんな日本の銘菓を3つ紹介する。

桔梗屋信玄餅 極:もなかの容器食べて環境配慮

1つ目は山梨県を代表する伝統菓子「桔梗信玄餅(ききょうしんげんもち)」だ。甘みを抑えたもっちりやわらかい餅に、きなこと黒みつをかけて食べる。食べきりサイズでビニール製の風呂敷に包まれた姿も特徴的。1889年(明治22年)創業の桔梗屋(山梨県笛吹市)が1日12万個を製造し、販売している。

もともと「山梨県のお土産」といえばブドウやモモなど、季節が限定されるフルーツが主流だったところ、「通年で食べられる、山梨独自の商品を」と1968年(昭和43年)に作られたものだ。

筆者は東京出身だが、子どもの頃、夏休みには長野へ家族旅行に行くのが恒例で、道中のインターチェンジで買ってもらう桔梗信玄餅が大好きだった。今でもパッケージを見ると、夏の風景が鮮やかによみがえる。めいっぱい詰まったきなこや黒みつを飛び散らせながら、食べたことを思い出す。

ところが昨年末、我々ファンにとって衝撃的(?)なニュースが飛び込んできた。2021年12月24日、新バージョン「桔梗信玄餅 極(きわみ)」が発売されたのだ。餅が入った「器ごと」食べられるように新開発された商品で、今まで何度となくこぼしてきたきなこも残さず食べ尽くせる。

容器は、壊れにくいよう独自のレシピで設計された「器の形をした最中(もなか)」だ。ありそうでなかった発想が面白い、環境に配慮する今の時代にもぴったり、と10社以上のメディアが取り上げ、地元で購入した客たちがツイッターで取り上げて大ヒットに至った。

発売直後から品薄が続き、社長の中丸純さんもまだ1個(!)しか食べられていないという。

「食べられる容器に、という発想は54年前の商品発売当初、お客様のファンレターからいただいたと先代の祖父や父に聞いていましたが、生産体制が整いやっと実現できました。ただ、20年以上前から賞味期限が近づいた桔梗信玄餅を社内で回収し『詰め放題』サービスで販売したり、食品廃棄を減らし肥料に替えて自社農場で活用したり、といったサステナブルな取り組みは長らく続けていることを、あらためてお伝えしたいです。『桔梗信玄餅 極』の商品名は、これで頂点を極めた、のではなく『さらなる高み、極みを目指す』という意味を込めました。弊社のより一層の進化を今後も見届けていただきたいです」(中丸さん)

元祖くず餅:乳酸菌発酵でお肌がつるつる

日本の銘菓2つ目は船橋屋(東京・江東)の「元祖くず餅」だ。1805年(文化2年)創業、東京の亀戸がルーツ。もっちりしていながらつるりとのど越しのよい、三角形のくず餅。もちと呼ぶが、小麦を原料とする江戸時代発祥の「和菓子唯一の発酵食品」だ。小麦粉を水で練った後、グルテン(タンパク質)を取りのぞき、残った小麦粉でんぷんを木のたるで乳酸発酵(450日間)させて蒸すとあの形状になる。半透明で弾力のある独特の食感にはファンが多い。

「元祖くず餅」は、現在も多い日で1日4万食分を売り上げる。安泰な老舗のようだが、次々と新しい仕掛けを打ち出し続けている。2021年3月には表参道に、カフェと美容サロンを兼用した新施設「BE:SIDE(SWEETS&TREATMENT)」をオープンした。

カフェはともかく、くず餅と美容の組み合わせを「意外」と思う人も少なくないだろう。長年、女性客から「船橋屋のくず餅を食べると肌の調子が良い」「快腸になる」と喜ばれていたそうだ。調べたところ、くず餅の発酵で使う木のたるに、植物性の乳酸菌株(善玉菌ラクトバチルス乳酸菌)を発見し、「くず餅乳酸菌」と命名した。この乳酸菌を使ったドリンクや化粧水を開発したのだという。

この表参道店でしか食べられない限定商品の「みずくずもち」が、SNSで話題となっている。食感はぷるんぷるん、くず餅をさらに爽快にしたような新しい味だ。「賞味期限が提供後20分」というユニークさも加わり、大ヒット。スプーンで弾く動画を若い女性客が投稿している。

一連のヒットの影には、船橋屋の「中の人」としてテレビの情報番組でも複数回取り上げられたSNS広報・宣伝担当者、20歳代の月岡紋萌(あやめ)さんの力が大きい。

ゆるキャラの「#くずもちくん」や、「#フナバシスト(船橋屋の熱烈なファンのこと)」といった新語をツイッター上でファンと一緒に生み出し、船橋屋の日常を積極的に発信している。5000人のフォロワー数を2年間で約7万人に増やし、「昔ながらの菓子」というイメージを一新させた。新たな集客につなげたのはもちろん、「ツイッターをきっかけに、年1回のペースだったのが毎月くず餅を食べるようになりました」と話す客も出てきたというので驚きだ。

白い恋人:北海道土産からDNA引き継ぐ「イシヤパンケーキ」

日本の銘菓、3つ目は北海道の「白い恋人」だ。1947年創業の石屋製菓(札幌市)が46年前に開発した。ラング・ド・シャ(極薄のクッキー)に、チョコレートを挟んだ菓子だ。百貨店の催事などを除いては、道内でしか販売していないもので、北海道土産の定番ともいえるもので、全国的な認知度は抜群ではないだろうか。繁忙期は1日140万枚を製造するそう。コロナ以前は中国人観光客にも大人気で、彼らが北海道を訪れる際、飛ぶように売れていたそうだ。

同社も新しい試みを続けている。2016年には初めて北海道外に出店。「ISHIYA-G」という新ブランドで、銀座を皮切りに東京と大阪に全5店舗を展開した。ここには「白い恋人」はないが、「白い恋人のDNAを受け継ぐ」という「サク ラング・ド・シャ」を販売中だ。チーズ・ミルク・塩・ワインなど北海道産の食材をチョコレートやクッキー生地に使った菓子で、商品そのもののおいしさと、美しいパッケージがうけて爆発的にヒットしている。新型コロナウイルス禍前までは女性客が長蛇の列を作り、即日完売状態が続いていた。

19 年には東京・日本橋の商業施設「COREDO室町テラス」にカフェ「ISHIYA NIHONBASHI」をオープン。「白い恋人」と同じチョコレートや北海道産牛乳を使ったソフトクリームやパフェが並んでおり、ここでもヒットを生み出す。スタッフが提供時にするっと筒を抜くと、花が開くように生クリームが流れる「イシヤパンケーキ」だ。多くの女性客が相次ぎ投稿し、メディアでも取り上げられ、行列ができた。

コロナ禍の旅行自粛で土産物需要が激減、大打撃を受けたことで、同社は21年に新たな施策を打ち出す。「白い恋人」発売以来初めて、他社とのコラボを企画した。森永乳業と開発したチョコレートドリンクやアイスクリームは購入した客がこぞってSNSに投稿した結果、評判となって販売増へつながった。

46年前に生まれた人気商品から新機軸を打ち出し、令和になっても世を沸かせ続ける姿には感心させられる。

今回紹介した銘菓3社の菓子は、いずれも知名度は十分にあり、正直「黙っていても売れる」ものだが、定期的に思い出してもらうための仕掛けがすごいと思った。

取材して3社とも声をそろえていたのは「斬新すぎて老舗のブランドイメージを逸脱してはいけない」し、逆に「ありきたりでは世の中に驚きを起こせない」というジレンマだ。どこでバランスを取るかが難しく、正解は誰にも分からない。手探りで挑戦するしかなく、それを続けてきたからこそ、50年100年と息切れせずに勝者であり続けているのであろう。

(フードライター 浅野陽子)

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