――不妊の原因が男性側にあるケースでも、過去とは治療の状況が変わってきていますか。

「積極的に検査や治療を受けようという男性が増えていると感じます。男性側の治療でも、無精子症の男性の精巣から手術で精子を採取して、顕微鏡の下で精子を直接卵子に注入する『顕微授精』に使えるようになるなど、治療の幅が広がっています」

――4月から始まる保険を使った治療だけではニーズに対応しにくい、というのはどのようなケースを指すのでしょうか。

「体外受精について説明すると、今回保険治療の対象にならなかった高度な技術がいくつかあります。成熟精子がヒアルロン酸に付着することを利用して選別する方法、あるいは培養中の受精卵の様子を内蔵カメラで観察するといった手法などです。いずれも妊娠・出産率を引き上げる効果があります」

「こうした高度な技術は先進医療として保険診療と併せて利用できるようになる方向ですが、認められる見通しがまだ立っていない技術もあります。現在の不妊治療は、患者さんの家族計画やライフプランにあわせた治療ができるよう十分にコンサルテーションを行ったうえで、治療手段を選んでもらうというオーダーメード型が増えています。保険治療だけでは対応できない部分が出てきます」

――治療の質が落ちるということになるのでしょうか。

「不妊治療を行う医療機関は新しい技術の開発・導入や、受精卵の培養などの作業を二重三重にチェックするといった管理・運営に多額のコストをかけています。保険適用によって治療費が抑えられれば、こうしたコストが十分に賄えず、限られた費用の中で事業の最適化を進めなければならなくなり、結果的に提供できる治療が限られたものになってくる恐れがあります」

「不妊治療クリニックによっては、保険診療とそうでないオーダーメード型の診療の両方に対応するため、担当する医師やフロアを別にするといったことを検討しているところもあると聞いています。医療現場では保険適用の拡大によるメリットを実現しつつ、多様な不妊治療のニーズにこたえていくための工夫がこれまで以上に求められるでしょう」

(編集委員 吉川和輝)

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