夫婦げんかを避けたいタイミング3つ 一晩寝れば変わる

――育児や家事の分担などでもめた場合、良い解決策はありますか。

安藤 育児や家事の分担に限った話ではないですが、次の3つのタイミングは夫婦げんかを避けた方がいいと思います。夫婦のどちらかが「眠い」「おなかがすいている」「疲れている」というときが、それです。

こういう生理的な欲求を満たしてから話し合うと、意外に「どうでもいいや」となることも。だから、上の3つに当てはまるときは、「もう早く寝よう」と切り上げることをおすすめします。一晩寝れば気持ちが変わって翌朝、「昨日はごめんね」の一言で済んじゃうんですよ。ところが夫婦2人が若ければ若いほど、売り言葉に買い言葉でいさかいを続けがち。我が家もかつてはそうでした。これは本当につらいですし、あまりプラスになりません。

働きながらの育児では、子どもが急に熱を出して保育園から呼び出されることも。子どもの保険証がどこにあるか、パパも確認しておいたほうがいいと思います。私の場合は、自分の職場のほうが保育園に近かったので、保育園からの緊急連絡先も自分にして、いざというときのために保険証のコピーを常に携行していました。

夫婦共に働きやすく、ということでは、互いのスケジュールのシェアも大切です。できるだけ早い時期から時間単位でシェアできるといいですね。仕事上の付き合いがある場合も、それを見れば相手が忙しい時期はいつかなど分かり便利です。

ワークライフシナジー 育児や家事は仕事にも良い効果

――「父親を楽しむ」ことで、仕事にプラスになることはありますか。

安藤 育児や家事をがっつりやると、仕事にもいい効果が出ます。「ワークライフバランスより、ワークライフシナジー(仕事と生活の相乗効果)を考えよう!」と言っているのは、正にそのことです。「自分は副担当」と思っているパパは、家事や育児は生産性が低いと思っているのではないでしょうか。

実は家事時間はブレインワーク(頭脳労働)にぴったりなんです。私自身を振り返っても、仕事でうまくいったアイデアは全部、皿洗いをしているときとか、洗濯ものを干しているときに考えついたことです。パソコンに向かっているときは何か考えながら作業をしているわけだから、なかなか新しい発想は出てこない。けれど、家事で手だけ動かしているとき、頭の中はスッキリしているので斬新なアイデアが浮かびやすい。5年後や10年後のビジョンを考えるのに向いています。

育児をすれば、子どもを通して社会をみていくことになります。だから、たとえばサステナビリティー(持続可能性)について考えるようになるし、社会課題も見えてきます。

子育ては未来育て このNPOの解散が自分のミッション

――「(3人の子育てを通じて)おむつを7000枚替えた」「6000冊の絵本を読んだ」など子育てを巡るエピソードも多い安藤さんですが、「違う地平」は見えましたか。

安藤 見える風景は人それぞれ。私が代表して語るものではないと思っています。

ただ、1つ確実にいえることは、「子育ては、未来育て」だということ。子どもたちは未来の社会をつくってくれる人材です。戦争がない社会、多様性が生きる社会を築いていくといったことのほか、ビジネス的にも(米のIT大手である)GAFAに勝てるような人材を日本がどう育てていくかということまで関わってくる。だから父親が育児をすることは未来育てなのだ、と捉えていい。そんなファンタスティックでエキサイティングなプロジェクトはほかにないと思いませんか。

写真はイメージ=PIXTA

安藤 もっとも、子育ての主役は子どもです。親は子どもが成長するための環境をつくったり、応援したりしているだけなのです。それでも子どもは親を見ているもの。自分の親が朝、出勤するときにうなだれて下ばかり向いて歩いていたら、あるいは帰宅して会社や上司の愚痴ばかりという感じだったら、子どもたちは「社会に出てもロクなことがないな」と思ってしまうでしょう。

逆に仕事を終えた父親が家に帰って子どもと一緒に夕飯を食べながら、「仕事は大変なこともあるけど楽しいぞ」と笑ってビールを飲んでいたら、その姿を見て育った子どもたちは大人になることを、そんなに怖がらないでしょう。

親が見せる姿は子どもたちの未来につながっている。「笑っているパパを増やしたい」と活動している理由には、そんな思いもあります。

何年後か分かりませんが、日本が変わるというか、時が満ちて笑っているパパが増えたときに、このNPOを解散するのが私のミッションです。父親の家庭参加が進んでいるとされる北欧に、ファザーリング・ノルウェーやファザーリング・スウェーデンはないじゃないですか。

いま職場で、女性に「育休取るの?」って質問しないですよね。けれど女性も育休取得が当たり前になるまでに20年くらいかかったと思います。同じように「昔、男性の育休が取りづらい時代があったんだよ」と新入社員と会話する時代がくるかもしれない。そんな日が訪れるのを楽しみにしています。

(佐々木玲子)