夫婦の家事分担、決める前に一通りこなそう 

――夫婦の家事分担について、アドバイスはありますか。

安藤 まずは分担を決める前にパパが1カ月くらい、一通り全部自分でやってみるといいと思います。育休中の場合だけでなく、通常勤務の方もです。自分でやってみると冷蔵庫の食材が切れていないか気になるし、「生ゴミを出す日はいつだっけ?」みたいなことにはならない。

私もかつては自分を副担当だと思っていて、いろいろ失敗しました。燃えるゴミを出す前の晩に飲み過ぎてゴミを出しそびれて、妻に叱られたことも。なので、今は「ゴミ出し前夜は深酒しない」と自分のルールを決めています。

一通り家事をやってみれば、忘れたり間違えたりとどこかで痛い目に遭う。とはいえ、それを経験すれば、なんでも人間はうまくなるんです。「もう2度とこういう思いはしたくない」と思うから。やるべきことを覚えるし、非効率的なことは効率的にやろうとする。

それは普段、仕事でやっていることのはずです。職場では皆さん、「働き方改革で無駄な会議の削減を」とか「DX(デジタルトランスフォーメーション)を入れて生産性を高めよう」とやっている訳ですよね。家庭だって同じです。

分担ルール、破りがちだとママの負担増で悪循環に 

安藤 夫婦の家事分担で、何曜日はどっちが食事をつくるとか洗濯はどうするとか、かっちり決めることはおすすめしません。最初はうまくいっても絶対どこかで破綻する。「きょうは思わぬ残業が……」とか「急な飲み会が入っちゃってさ」とか、私もそうでしたが大体パパがルールを破る。それが続くと妻は、「もういい。私が全部やればいいんでしょう?」と怒りあきらめ、「夫はいないもの」として家庭を回していくこととなって、ママのワンオペが固定化されてしまいます。

そうなってしまうと、ママは仕事と家庭の両立が難しくなりますよね。ママのキャリアが伸びないとパパは「自分が稼ぎ頭として家族を支えなければ」と男の生きづらさともつながる「大黒柱バイアス」を抱えることになる。そして、また残業にいそしんで家庭のことはママに任せきりで、ママはキャリア形成が難しくなり……と悪循環に陥ってしまう。

ぼくらはそうした「負のループ」を教えつつ、職場の人事考課でSとかAとかBとか評価が何段階かあるように、家事にも貢献度合いで何段階かあることを伝えています。どこまでやるか、自分で考えようという訳です。

たとえば、お風呂掃除で浴槽だけ洗うのはCレベル。週1回、排水口の髪の毛とかまで掃除したらBダッシュです。それらに加えて、洗い場の方もきれいにしたらBレベル。そこまでの全部に加えて、ボディーソープなどがきれたときに黙って補充するのがAレベルです。

「シャンプー、きれてるよ」はZレベル。うちの理事は皆、Sレベルのはずで詰め替えだけでなく、在庫管理までしています。家事セミナーではそうしたことを教えて、「早くBダッシュまでいこうね」など目標を設定していきます。

「名もなき家事」もいろいろ さっぱりするからやる

安藤 家事には「ルンバで掃除」といったような、見栄えや聞こえのいい家事だけでなく、「名もなき家事」が実にたくさんあります。花瓶の水を替える、トイレットペーパーを補充する、洗面台の鏡をきれいに拭いておくといったことも、必ず誰かがやっている訳です。

だから、やれることはいろいろあります。例えば、パパが時間のあるときに車で出かけて、日用品やコメや水など重いものを買いそろえてセットしておいてくれたら、家族は楽ですよね。

「なんでそんなことを俺がやらなきゃいけないの?」と思ったら、それは意識がまだ副担当だということ。共働きなのに、「支度は全部してくれるもの」と時代劇に出てくる本陣に戻ってきた武士のように自分だけ休んでいたら、妻が不機嫌になって当然ですよね。それでは我が家がどんどんアウェーになっていってしまう。

自分の家なんだから、アウェーでなくホームにしたいですよね。家族が困らないとか、清潔で健康的に暮らせるように家事をパパが主体的にやれば家族もハッピー。自分がさっぱりする。それだけですよ。

ママにアドバイスしたいのは、パパに家事を教えるときはテクニックや分担、やり方だけを教えてもダメだということ。なんのために家事はあるのか、そこを話し合えるといいと思います。

ちなみに、洗濯とゴミを出すのはパパ、などある程度の分担はありますが、かっちり決めずに「気づいた人、やれる人がやる」がうちのルールです。もちろん、これが成立するのは夫婦とも副担当ではないからです。

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