Men's Fashion

タイ、パンツ、ジャケット…永遠の定番ブランド3選

How to

持っておくべき男の逸品(2)

2022.11.1

MEN'S EX

ここに紹介する品々は、本誌読者ならどれも何度となく目にしたことがあるだろう。いわゆる“永世定番”アイテムである。その魅力はただの普遍性ではない。再訪するたびに新しい顔を発見できる“循環性”だ。その証を愛用者の声に求めてみよう。




永世定番(1)マリネッラのシルクタイ

虜(とりこ)になる締め心地とはまさにこのこと!

ブランドの象徴として長年展開しているプリントの小紋タイをはじめ王道クラシックな魅力が薫るコレクション。各3万7400円(マリネッラ ナポリ東京ミッドタウン)

談:池田哲也(服飾評論家)

1968年生まれ。三越のローマ駐在員として渡伊し、現地のものづくりに感銘を受ける。中でもナポリ仕立てに傾倒し、現地に太いパイプを築く。もちろんマリネッラとも旧知の仲。

私はかねて、マリネッラのネクタイを“リボンのような締め心地”と評してきました。非常にしなやかで、窮屈さをまるで感じさせない心地よさ。ナポリスーツと同様に地中海的とでも申しましょうか、とにかく一度体験すると忘れられなくなる快適さなのです。思うに、現当主マウリッツィオさんがかつて水球のイタリア代表選手を務めていたことが関係しているのでは。肌をさらして競技するだけに、肌触りには人一番敏感。ゆえに、タイ作りでも締め心地をとことん追求したのでしょう。しかもただ柔らかいだけではなく、独特なハリもある。これが締めたときに絶品の立体美を生み出すのです。

また美観についていえば、大剣と小剣の中間部が絶妙にすぼまっていることも秘訣でしょう。ノットはキュッと引き締まり、ディンプルはふんわり広がる理想的な表情になる。つまり、マリネッラは設計上のデザインが非常に優れているわけです。イタリアはデザイン大国として知られていますが、その背景には長年にわたって進めてきた“デザインの言語化”があります。学術機関でデザインを研究し、“美しさ”を理論化する。マリネッラのデザインからも、そういった理論的美しさを感じます。ネクタイ一本に、イタリアの英知が結晶化しているのです。

池田さんの愛用品