
『与作』で演歌の「こぶし」に挑戦
お2人から「こぶし」を学ぶコーナーでは、僕が『与作』に挑戦しました。一生懸命やっていたら、何となくできるようになって、「やればやるほどうまくなって、回っている」と言ってもらいました。実際はどうか自分では分かりませんが、もし多少でも本当に回っていたのなら、すごく楽しいことだと感じました。ミュージカルや僕がこれまで歌っていた歌には全然なかった要素なので。突然、競技点の付く技が加わった感じで、お客さまからの「おお、回ったね」みたいな反応もうれしかったし。体全体を使うから、感情だけではなくて、もっと身体的な歌になるし、面白かったです。
僕は力任せにこぶしを回したのですが、お2人が歌うのを聴いていたら、細かくさらっと回したり、笑いながら回したり、泣きながら回したりと、本当にバリエーションがたくさんあるんですね。洋楽でいうフェイクの節回しにも似ているし、自分が今後歌うときも力が入るようなところでは使えるんじゃないかと思いました。なので、その後で映画『タイタニック』のテーマであるセリーヌ・ディオンの『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』を歌ったとき、実はちょっと回したりしてみました。そんな演歌と洋楽の共通点が見えたりもして、ためになりました。
ラストには、3人でクイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』に挑みました。正直言うと、僕はやるまでは懐疑的な気持ちもありました。3人でこの曲を歌うことが本当に必要なのかな。すごい努力をしないとできないのも分かっていたので、それに見合ったものが得られるのかなと。それで、この曲を1週間の間に一番練習しました。大変でしたが、やればやるほどできるようになって、本番では昼の公演も夜も何の不安もなく歌えたし、これで最後かと思うと感動もしました。だから結果やってよかった。それって何なのかなと考えると、まず曲自体が素晴らしいので純粋に音楽の力だし、さらにそれにチャレンジする喜びでもあるなと。歌ってみたら、3人それぞれのいいところが出たし、やってみることの大切さ、飛び込むことのすてきさを感じました。それは本当に練習のたまもので、ちゃんと練習したからこそ行ける世界があるんだな、とあらためて思いました。
アンコールの『友だちはいいもんだ』は、僕が提案しました。劇団四季のミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』の劇中歌で、三木たかしさんが作曲された曲です。三木さんは演歌もミュージカルも作曲されています。まさに2つのジャンルの懸け橋になる歌だと思って、ぜひ3人で歌いたいと。やっぱり仲間という意識がすごく強くなりましたね。
役者同士だと、1カ月稽古をして、1カ月本番をやるなかで仲が深まって、遠慮がなくなったり、お互いをある程度分かったりしていきます。でも歌手同士って、歌番組でお会いするのがほとんどで、その場限りのおつきあいになりがちです。でも今回は、公演は1日で昼と夜の2回でしたが、1週間リハをして一緒の時間を過ごして、同じ課題にチャレンジしたことで、ジャンルの壁がなくなったように思いました。本当に素晴らしい仲間だという気持ちに僕はなったし、お2人もそうだったように感じます。天童さんは大先輩なので、おこがましいですけど。その一体感がすごくうれしかったし、ジャンルが違うからこそ学べたこともたくさんありました。違う相手を知ることは、自分を知ることにもなります。準備や練習は大変なことではあったけど、やったかいはありました。