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野球漫画の「あぶさん」や江戸人情物の「浮浪雲(はぐれぐも)」で知られた、小学館の大人向け漫画雑誌「ビッグコミックオリジナル(以下「オリジナル」)」が50歳を迎える。もともとは先行して創刊された「ビッグコミック」の増刊号として、4年遅れて1972年に創刊された。しかし、今では大人向け漫画雑誌の部数でトップに躍り出ている。多くのヒット作に彩られた「オリジナル」の半世紀を振り返る。(前回記事「ビッグコミックビッグの秘密 ゴルゴの次に何狙う」)

「釣りバカ日誌」「深夜食堂」「黄昏流星群」「風の大地」「三丁目の夕日」など、今も続く長期連載が多い。長期連載作品は雑誌のカラーをつくる。雑誌の人気を保つうえでもメリットが大きい。長く続くヒット作づくりは容易ではないが、「オリジナル」は大人向け漫画誌で最も成功したケースの1つだろう。

表紙のイラストは犬と猫でほのぼのした味わい

表紙のイラストは犬と猫でほのぼのした味わい

「日経エンタテインメント!」誌が2018年にまとめた「連載開始から20年以上の長寿マンガ」ランキングでは、上位30位内に「オリジナル」の連載作品が4本も食い込んだ。「長期連載作品が生む信頼感は読者に安心できる居心地を提供するうえで強みになっている」と、石原隆編集長は語る。

「オリジナル」で柱に据えられているのは「人間味やあたたかみ」だと、石原氏は言う。ことさらに人情路線を押し出しているわけではないが、「ヒューマンな情感の濃い作品が『オリジナル』らしさを生んでいる」(石原氏)。確かに「浮浪雲」や「釣りバカ日誌」「三丁目の夕日」などには、人肌のぬくもりとやわらかいまなざしが感じ取れる。

大人向け雑誌ならではの、少年誌になじみにくい登場人物や設定も同誌の持ち味だ。たとえば、水島新司氏の「あぶさん」は大酒飲みという設定が少年誌に収まらない。契約更改や球団事情など、プロ野球の現実に根差した描写も大人向きだった。まだ「ビッグコミック増刊号」だった1973年に誕生し、2014年まで約41年間にわたって「ビッグコミックオリジナル」の顔的存在であり続けた。石原氏は「『オリジナル』の軸を支えてくれた」と振り返る。

ジョージ秋山氏の「浮浪雲」は1973年に連載が始まってから約44年も続き、物語は計1039話にのぼった。「浮浪雲」は幕末を舞台に、自由気ままな遊び人の主人公の周辺で起こる、市井の喜怒哀楽を描いた。さりげない人生訓が盛り込まれ、軽やかな哲学性も帯びた。「壊し屋」「剛腕」と呼ばれた小沢一郎氏の愛読書としても有名で、小沢氏による傑作選も出版されている。

ただ、こうした代名詞的な作品は、「あぶさん」が14年、「浮浪雲」が17年にそれぞれ終了。その一方で、17年から「昭和天皇物語」がスタートし、新たな代表作に育ちつつある。

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