映画・テレビドラマ化が相次ぐ

今や大人向けカテゴリーでは発行部数でトップの漫画誌だ。母体となった「ビッグコミック」も部数では上回っている。部数は「ビッグコミック」の22万部を超える38万部(どちらも2021年7~9月、日本雑誌協会調べ)。「ビッグコミック」と冠する4誌(残りは「ビッグコミックスピリッツ」と「ビッグコミックスペリオール」)のうち、ダントツの稼ぎ頭だ。

青年・大人向け漫画誌では不動のトップだった「週刊ヤングジャンプ」(集英社、同34万部)も抜いて、この分野でナンバーワンとなった。19年にはトップの座を競い合っていたが、どちらも部数を減らす中、減少幅を抑えた「オリジナル」が上に出た格好だ。スマートフォンで漫画を読む人が増えて、「週刊ヤングジャンプ」のような青年漫画誌は苦戦を強いられている。

「ビッグコミックオリジナル」の石原隆編集長

一方の「オリジナル」もスマホに読者を奪われる流れにあるが、読者年齢層が青年誌より高い事情もあってか、「固定読者の支持が底堅い」(石原氏)。紙で読む習慣を持つ読者層に支えられていることが部数を下支えしているようだ。「通勤が減っているのも、影響を与えている。ただ、減り幅がまだ小さいのは、売っている店を探して買ってくれる読者が少なくないから」とみる。

発売日を日付の数字で固定している「ビッグコミック」ファミリーの方式は、読者が発売日を忘れにくい点でメリットが大きい。週刊漫画誌では毎週、同じ曜日に発売するパターンが多いが、「オリジナル」の場合は毎月5日と20日の発売。「日付固定式は習慣づけやすい」(石原氏)という。

特段のマーケティングを仕掛けてきたわけではないのに、作品の知名度が高いのは、映画やテレビドラマでの映像化が相次いだことが大きい。現在も連載中の「深夜食堂」はテレビドラマ化が繰り返され、映画にもなった。「前科者」は21年にテレビドラマ化され、映画版が1月28日に公開されたばかり。大人向けに練り上げたストーリーが多いので、映像化にも向くようだ。

「酸(す)いも甘いもかみわけた人生模様をつづって、いかにも『オリジナル』らしい」と、石原氏がとらえるのは、中年やシニアの恋愛を題材とする、弘兼憲史氏の「黄昏流星群」だ。何度もテレビドラマや舞台作品の原作に選ばれてきた。エロスを押し出しすぎず、内面のひだに分け入る描写は大人の読者層から支持が根強い。風俗営業のデリバリーヘルスを描いた「フルーツ宅配便」もテレビドラマ化された。

「主な読者層は50代前後」(石原氏)だけに、読み手に社会常識や世間知を求めるような作品でも載せられる。「家栽の人」は包容力の豊かな家庭裁判所の裁判官を描く一方、「最強伝説 黒沢」は対人関係が不得手な建設会社の現場監督が主人公。こうした「大人の事情」を扱う物語の味わい方を知る読者層の厚みそのものが「オリジナル」の強みともいえそうだ。

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新時代を担う漫画家を迎え入れ