岩手缶詰「鯖チョコ」(170グラム、410円)

究極の進化形は前代未聞の味

究極の味変サバ缶とも言えるのが、岩手缶詰(岩手県釜石市)の「鯖チョコ」だろう。“チョコ”とは本物のチョコレートを指しており、チョコレートソースで味付けしたサバ缶ということになる。

世界には様々な味付けのサバ缶があるが、僕の知る限り、これまでチョコレート味のサバ缶は見たことがない。ただし、チョコレートを使った料理は知っている。メキシコの「モレ」と呼ばれる、チョコレートと香辛料をすり潰したソースを掛けた料理である。チョコレートの原料、カカオがコクとして作用していて、甘さもあるが、同時に苦み、塩味などもあって、非常に複雑で濃厚な味だった。

で、結論から申せば、鯖チョコは素晴らしくウマい。使われている基本的な調味料は清酒、みりん、しょうゆで、それだけならサバのしょうゆ煮だが、その上でチョコレート、砂糖、バターなどのソースが加わっている。

例えて申せば、煮込み料理やカレーにコクが欲しい時、隠し味として板チョコを加えるテクニックがある。それと同種の味で、チョコレートの甘さと香りは確かにあるが、それはモレと同じく、味を深めるためのコクとして作用している。

さて、この究極の味変サバ缶はどうやって食べればいいのか? 僕としては、写真にあるようにメインの一品料理としてぜひ味わってもらいたい。あらかじめ缶ごと湯せんし、温まった中身を平皿に盛りつけ、ナイフとフォークで食べる。他にサラダやスープなどがあれば、きちんとしたコース料理になるはずだ。

ちなみに、味変サバ缶で最初にヒット商品となったのは、13年に発売された岩手缶詰の「サヴァ缶」だ。塩味をベースにし、オリーブオイル漬けになった同商品は、それまで和テイストばかりだったサバ缶の概念をすっかり変えた。オリーブオイル漬けにしたことで洋食とも合わせやすくなり、パスタやピザの具にも使われるようになった。

様々な工夫を凝らした味変サバ缶は、夕食のメインになりうるクオリティーを持っている。共働き世帯が増え、家事労働時間が減っていく中、調理時間を少しでも短くしたい世帯には力強い味方なのである。

(缶詰博士 黒川勇人)

黒川勇人
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。

*サバ缶ブーム

17年に売上高でツナ缶を抜き、サバ缶が魚介類缶詰市場でトップを獲得。18年にはメディアやSNSで話題になり「サバ缶ブーム」と呼ばれるようになった。