誰しも最初のキャリアが自分の常識になる

実はこの会社の社長のような意見は、決して珍しいものではありません。

誰でも、昇給という経験をしていなければ、概念としても仕組みとしてもなかなか理解できないものです。そして、他人から給与をもらったことがないという経営者は割と多く存在するのです。

さて、もしあなたがこの会社に新卒として入社していたら、おそらく昇給がないことに対しても違和感なく働くことができていたでしょう。そして、人事改革の結果として昇給の仕組みができた際に、もしかすると「昇給なんていらないから、やった分だけ賞与がほしい」と思っていたかもしれません。しかし昇給が普通に存在する会社から中途転職していたとしたら「なんてがめつい社長の会社だ」と後悔したかもしれません。

そんなとき、事前に人事制度の仕組みを知っておけば、誤解なく働くことができるはずです。とはいえ、実際に会社に入る前に「どんな人事制度なのか教えてください」とはなかなか言えません。多くの会社では、人事制度を機密情報に指定してもいます。

ではどうすればよいのか。

方法は簡単です。

ぜひ社長の経歴を調べてみてください。

特に創業者が今も社長をしている会社なら、その人の経歴を見れば、人事制度の方向性もある程度見えてきます。

人事コンサルタントとしての私の経験から、あえて社長タイプごとの会社の人事傾向を分類すると、おおよそ2つにわけることができます。

給与を固定費として考えるタイプの会社のキャリア

ここまでの事例であげた、給与をもらったことのない創業社長の場合には、人事制度としては賞与などのインセンティブで社員をモチベートし、行動させようとする傾向があります。例えば月給は固定給として設定する。試用期間中は22万円で、正社員採用されたら25万円。あとは業績にあわせて四半期ごとに賞与を支給する仕組みです。

このような会社でも、まったく昇給がないわけではありません。肩書が変われば固定給としての給与を増やすことが多いからです。たとえば、平社員は25万円だけれど、主任になると28万円、係長で32万円、課長になると40万円、といった具合です。

もしあなたがそういう会社に勤務しているのなら、わかりやすい成果を生み出すことと、社内で昇進するための基準を確認してそのために努力することで、給与を増やすことができるでしょう。

なお、このタイプの人事制度を好む社長の経歴としては、給与をもらったことがない人以外だと、金融機関出身の方などにも見られます。多くの金融機関では昇給の仕組みはもちろんあるのですが、それ以上に、人件費とは利益から配分すべきものだ、という意識がはぐくまれるからではないか、と想像しています。だから成果としての利益を出していないのに昇給させるなんてありえない、という発想になりようです。ただ、金融機関出身の経営者の場合、従業員の基本給額を高めに設定することで、生活保障はしようとする傾向もあります。

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どんな会社もどこか似ていてどこか変