不妊治療、伝えやすい職場に メンター指名や専門窓口

4月から人工授精や体外受精など不妊治療の保険適用範囲が拡大した。働きながら治療する人の悩みとなるのが、上司などとの情報共有だ。治療は心身への負担が大きい。業務内容に配慮する企業は増える一方、職場に「伝えていない」人が5割に上るとの調査もある。プライバシーを守りつつ、円滑なコミュニケーションを促す取り組みが求められている。

不妊治療「職場に全く話していない」5割超

「会社を辞めなくてよかった……」。千葉興業銀行(千葉市)の20代の女性行員は今年3月、不妊治療に専念するため社内の長期休暇制度に申し込んだ。専門病院で医師から自然妊娠が難しいと診断されたことを受け、本格的な治療に臨むことにした。

相談したのは直属の上司である40代の女性課長。状況を説明すると休暇制度を紹介してくれたり、業務内容について配慮してくれたりした。女性は「もし職場の状況が違っていたら、退職していたかもしれない」と話す。

同行は安心して相談できる環境作りを進める。不妊治療に関する知識を職場で共有するために、2022年から全行員対象の研修を始めた。eラーニングの形式で、基本的な知識や社内制度を学ぶ。受講後のアンケートでは管理職らから「大変さを初めて知った」などの回答があったという。人事部の担当者は「治療を理解してもらえるのか不安に思う人は多い。相談しやすくなるような下地を作りたい」と話す。

厚生労働省によると、日本の夫婦の5.5組に1組が不妊治療を経験する(15年時点)。今年度から体外受精なども保険適用になったことから、治療を望む人は増える可能性がある。企業は支援制度を作るだけではなく、従業員のキャリアを一緒に考えていく風土作りが必要になる。

ただ、住友生命が今年2月、既婚男女5303人に実施したアンケートでは、治療中または治療経験者の男女494人のうち5割超が「職場に全く話していない」と答えた。職場に「伝えやすい」と感じている人は全体の3割弱にとどまる。従業員が上司に相談するにあたり、信頼関係がなければハードルは高い。

厚労省は20年3月、仕事との両立を促す国のガイドラインを策定。治療の情報が本人の意志に反し職場に知れわたることは避けなければならないとした。人事部に情報が届いても、直属の上司に不用意に共有しないのが原則だ。

オムロンは専門窓口で従業員からの相談を受けている
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