今こそ履きたい老舗の定番 おすすめはバーガンディー
「HUNKY DORY(ハンキードリー)大阪店」(大阪市西区)の店長、塚本康博氏にも話を聞いた。薦めてくれたのは、Timberland(ティンバーランド)の3アイ クラシックラグだ。1980年~90年代にかけての渋カジブームで大流行した一足で、店頭では、当時履いていたとおぼしい40~50代の人が購入するケースも多いという。
「僕が20代の時にもはやった一足ですが、当時はストリートカルチャーの文脈で履かれることが多く、個人的にはあまり興味を持てませんでした。ただ、時代が一周した今見ると、改めて履きたい気分になりました。歳を重ねたことで、作りのよさやモノとしての魅力にきちんと向き合うことができた部分も大きいですね」

アッパーのU字のステッチやヒール部分に関しては、いまだに職人が手縫いで仕上げる伝統的な一足だ。塚本氏はどんな部分に魅力を感じているのだろうか。
「アウトソールこそ重厚な雰囲気ですが、アッパーのデッキモカシンのフォルムは武骨というよりは品のあるイメージです。アッパーの分厚いオイルドレザーは、履き込むほどに味のある風合いに変化していくので、雑に履いてもみすぼらしく見えません。米国ブランドならではのタフさがありながら、上品さとのバランスも見事に両立させたモデルです」


大人っぽく履きこなすには、色選びも大事なポイントだろう。今回バーガンディーを選んだ理由も聞いてみた。
「バーガンディーは別色のブラウンにも似た色ですが、ブラウンよりも色気がある印象です。大人の男性にこそおすすめしたい色ですね。履き込むうちに、こげ茶のような色味に変わっていくのも楽しんでいただけると思います」

伝統的なモカシンの進化系 初秋コーデのアクセントに
「ここ数年、スニーカー人気が続いていますが、個人的にはもう飽和状態になってきていると感じています。モカシンタイプの革靴が今注目されているのは、歴史があるクラシックなデザインにもかかわらず、堅苦しさがなく親しみやすさを感じるからではないでしょうか」
そう話すのは東京・渋谷にある「SUN HOUSE(サンハウス)」神南店のマネージャー、遠川保則氏だ。日本発のブランド「visvim(ビズビム)」で20年以上にわたり支持されるモカシンシューズ「FBT」を選んでくれた。

ストリートで絶大な人気を誇る「visvim」だが、改めてどんなブランドなのだろうか。まず遠川氏にブランドのイメージを聞いてみた。
「たとえばゴアテックス素材に泥染めを施すなど、クラシックなアイテムにモダンなエッセンスを取り入れる手腕が抜群ですね。トラッドからカジュアルまで幅広いスタイリングに合わせやすく、また職人のこだわりが詰まったプロダクトは簡単には作れないものばかりです。価格は決して安くないブランドですが、買った方が何年も気分良く使えるアイテムが多いからこそ、長く支持されているのだと思います」
今回のFBTはデザインがユニークなだけでなく、履き心地へのこだわりも並々ならないものがあると遠川氏は話す。
「デザイナーは天然素材へのこだわりが強く、必ずはだしで履くそうなんです。軽くて柔らかい鹿革は植物性タンニンでなめすことで肌への刺激が少なく、通気性にも優れるのでムレにくいのがポイント。インソールにはナチュラルコルクを敷いているので、履くほどに自分の足の形になじんでいくのも魅力ですね」


革靴にもスニーカーにも分類できない一足と言えそうだが、おすすめのコーディネートはあるのだろうか。
「大人っぽく履くなら、丸首のニットに軽い素材のパンツなどのシンプルなコーディネートに合わせてほしいですね。FBTはディテールが特徴的なので、アウターがいらない初秋のスタイリングのアクセントにもピッタリですよ」

文:FACY編集部 平野美紀子(https://facy.jp/)
「Fashion × Analytics」は今回で終了します。

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